

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仕事や旅先で英語が必要になったときに、もっと勉強しておけば……と思うことも少なくないのでは。勉強ももちろん大事だが、その一方でテクノロジーに頼ってみる、という手もある。
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神戸に本社を置く中堅商社、太洋物産で働く山本大哉さん(30)も、テクノロジーを味方につけ、それまでの壁を乗り越えた一人だ。一昨年の秋、測量会社から転職して間もない頃、ディープラーニングの導入によってグーグル翻訳の精度が飛躍的に向上したと聞いた。半信半疑でトライしたが、確信した。
「これは使える!」
山本さんは、サウジアラビアに日本製のエアコンや住宅用のインターホンなどを売り込むのが仕事。測量会社時代も同じく中東担当で、地図製作の営業などをしていたが、英語で提案書や資料を作るのに徹夜することも珍しくなかった。
「やはり母語である日本語で考えないと論理的には書けないので、日本語でベースを書いて、そこから英訳していました。当時もグーグル翻訳を試したことがありましたが、まったく使い物にならなかった。仕方なく電子辞書を片手にコツコツ訳しているうちに、夜が明けていました」
ところが生まれ変わったグーグル翻訳では、日本語の原文をコピペすればたちどころにかなりの精度の翻訳文が出てくる。それを読み直して、単語や文意の取り違えがある箇所や接続詞をいくつか直すだけ。徹夜することはなくなった。
英訳作業にかける時間が減った分、サウジアラビアの人にもっとアピールするよう提案の内容をブラッシュアップするなど、本来力を入れたい仕事にエネルギーを割けるようになった。早めに仕上がった資料を何度か見返しておけば、ポイントとなる言い回しも頭に入り、商談の場でも英語がスラスラ出てくる。
「グーグル翻訳のおかげで仕事の効率も英語力もアップしました。いますごく仕事が楽しい」
満面の笑みでそう話す山本さんだが、もともとは超ドメスティック人間だった。高校は毎日の英単語テストや補習を強制されるのが嫌で全く勉強せず、1年から2年に上がれず留年。その後、大学に入りたい一心で勉強し、センター試験ではほぼ満点を取るまでになったものの、海外への興味はゼロ。24歳で勤務先からマレーシア出張を命じられるまで、パスポートすら持っていなかった。それが今や、バリバリの商社マンだ。