

ささやかれる東京五輪後の不況。先回りして就職に強い理系学部に入りたい。だが、文系に立ちはだかるのが数学の壁だ。何とかして回避する方法はないものか。
多くの高校で2年次に行っている文理分けは、将来を決める第一歩だ。しかし文系志望者のなかには「数学ができないから」と消去法で選ぶ生徒が意外に多いという。現在の就職状況は好景気に支えられ、売り手市場。文系学部出身者も引く手あまただ。だが、来年大学に進学する学生が卒業するのは2022年。東京オリンピックも終わり、市場は不況に陥っている可能性が高い。そうなると、再び理系学部が脚光を浴びそうだ。
アエラでは実就職率が高く、かつ数学を回避して受験できる理系学部を探してみた。数学を必須としない大学は意外と多い。注目は近畿大だ。工学部、薬学部、農学部などに数学のいらない入試方式が設定されており、いずれも高い実就職率を誇っている。秘訣は充実したフォローアップ制度。工学部は数学の授業を現状クオータ制にしており、習熟度テストを行って点数が足りない学生にフォローを行っている。
就職に有望な学部は医療系だ。
「狙い目は看護です。就職もいい」(大学通信・安田賢治ゼネラルマネージャー)
たとえば私学の最難関、慶應義塾大の看護医療学部は外国語と小論文が必須、あとは生物、化学、数学から1科選択する。上智大、杏林大、聖路加国際大、創価大などの看護系も同様に数学を必須としない。
歯学系や薬学系も数学を必須にしない大学がある。歯学系ならば明海大、日本歯科大、神奈川歯科大、愛知学院大、薬学系は城西大、帝京平成大、名城大など。人気上昇中のリハビリ系も数学を課さないところが多い。理系学部の最高峰、医学部医学科も数学抜きで受験できる大学がある。帝京大医学部は英語は必須で、国語、数学、物理、化学、生物の中から2科選択する。
もうひとつの狙い目が農学系。明治大、東京農業大、近畿大、玉川大、名城大と、獣医学系をのぞけば、ほぼ数学を選択しなくても受験できる。
明治大の農・農芸化学・生命科学科は外国語が必須で数学、国語、化学、生物から2科選択。120分で2科やるので、自分で時間を配分できる。食料環境政策学科は文系の色合いが濃く国語、外国語が必須。数学、生物、化学に加え社会科目から1科選択する。岩崎直人農学部教授はいう。
「数IIIまでは要求しませんが、数IIまでは学校の授業で勉強してほしい。大学で必要な数学は限られていますが、実験データの解析などで必要になるため、基礎は必要です」
(ライター・柿崎明子)
※AERA 2017年11月27日号より抜粋