家庭料理のみならず、独自にフランス、イタリア、スペイン料理も学び、“いのちを支える”ものとして「スープ」に着目。NHK「きょうの料理」でも披露され反響を呼んだ。そんな広い視野で日本の食に提言を続ける辰巳芳子さん(92)に、料理とは何かを聞いた。
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調べていただいて、「きょうの料理」の初出演の料理は「トマトソース」でしたか。イタリアの「サルサ・ポモドーロ・フレスカ」でしょうね。
「きょうの料理」といえば後にも先にもひとりだけ。「辻留」の辻嘉一先生ですよ。感覚的に素晴らしかった。論理的にもきちんと理屈を持っていらした。だから画面に魅力がありましたよ。
「この程度のものは作って召し上がって、季節を楽しんで元気でやってください」
という辻先生のなんとも言えない愛情が画面から伝わってきました。非常に愛情の深い方でしたね。私のような者も大事にしてくださって、
「あんさん、お母さん(料理研究家・辰巳浜子)の後をしっかりやらなあかんと思ってはいけない。あんさんのやりたいようにやりなさい」って声をかけてくださったこともあった。
いまの料理研究家は「簡単に」を連発するでしょう。家庭料理は簡単であってはなりませんよ。しなければならないことを徹底的にするのが家庭料理です。家庭の食事は人生そのもの。いのちそのものですから。