辰巳芳子(たつみ・よしこ、92)/1924年、東京都生まれ。料理家。フランス、イタリア、スペイン料理の研鑽を積む。“いのちを支える”ものとして「スープ」に着目。啓蒙を続けている(撮影/写真部・馬場岳人)
辰巳芳子(たつみ・よしこ、92)/1924年、東京都生まれ。料理家。フランス、イタリア、スペイン料理の研鑽を積む。“いのちを支える”ものとして「スープ」に着目。啓蒙を続けている(撮影/写真部・馬場岳人)
初出演/1974年10月17日 トマトソース(サルサ・ポモドーロ・フレスカ)※写真は2007年8月13日放送時のもの(撮影/小林庸浩)
初出演/1974年10月17日 トマトソース(サルサ・ポモドーロ・フレスカ)※写真は2007年8月13日放送時のもの(撮影/小林庸浩)

 家庭料理のみならず、独自にフランス、イタリア、スペイン料理も学び、“いのちを支える”ものとして「スープ」に着目。NHK「きょうの料理」でも披露され反響を呼んだ。そんな広い視野で日本の食に提言を続ける辰巳芳子さん(92)に、料理とは何かを聞いた。

【「きょうの料理」に初出演した時に紹介した料理はこちら】

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 調べていただいて、「きょうの料理」の初出演の料理は「トマトソース」でしたか。イタリアの「サルサ・ポモドーロ・フレスカ」でしょうね。

「きょうの料理」といえば後にも先にもひとりだけ。「辻留」の辻嘉一先生ですよ。感覚的に素晴らしかった。論理的にもきちんと理屈を持っていらした。だから画面に魅力がありましたよ。

「この程度のものは作って召し上がって、季節を楽しんで元気でやってください」

 という辻先生のなんとも言えない愛情が画面から伝わってきました。非常に愛情の深い方でしたね。私のような者も大事にしてくださって、

「あんさん、お母さん(料理研究家・辰巳浜子)の後をしっかりやらなあかんと思ってはいけない。あんさんのやりたいようにやりなさい」って声をかけてくださったこともあった。

 いまの料理研究家は「簡単に」を連発するでしょう。家庭料理は簡単であってはなりませんよ。しなければならないことを徹底的にするのが家庭料理です。家庭の食事は人生そのもの。いのちそのものですから。

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