「インターネットで得た情報でシャンプーやトリートメントにも詳しく、店員さんの勧めるものより、自分に合ったものをネットで買える。ヘアサロンに求めるのは、カットだけでいいのです」

 ヘアサロン業界は、低価格でサービスを提供するビジネスモデルが主流になりつつあるといい、「単価が5千円ほどの中価格層店舗から、今後の事業戦略についての相談が多いのが事実。これからますます、低価格かつ品質が担保された店同士の戦いとなるのではないか」と近藤氏は見ている。

■技術力を売りに

 変わりつつあるニーズに対応するため、格安ヘアサロン側も変化してきている。

 QBハウスを展開するキュービーネットHDは、若い女性の利用者が増えている地域では女性スタイリストを増やして配置するなどしているという。

 そして、これまで時短や低価格を前面に押し出していた同社だが、「最近ではお客様のニーズに応えられるよう、技術力も売りにしています」と広報部の平山貴之さん。「10~20分で高品質な仕上がりを実現するため、人材育成にもかなりの力を入れている」と話す。

 一般的な理美容室では、新人はアシスタントとしてベテランのスタイリストの補助に回り、直接的な技術指導は受けずに「見て学ぶ」。そして営業時間後に“自主練”としてマネキンやカットモデルを相手に技術を高めていくことが多い。

 しかし、キュービーネットにスタイリストとして入社すると、アシスタントとして現場に出ることはなく、まず約半年の研修を受けることになる。全国に7カ所ある研修所で座学と技術指導を受け、初受験で3人に1人は落ちるという「最終テスト」に合格できた人だけがスタイリストとして現場に出るという。

 さらに各店舗では、カットを始めてから最後に毛くずを吸い上げる「エアウォッシャー」を起動するまでにかかった時間が記録され、時間がかかりすぎていたり、クレームの数が多かったりすれば、再び研修の対象となるという。

 広報部の平山さんは「男女を問わずお客様が持つ理想のヘアスタイルを、安価で、かつ短時間で提供できればと思います」と話している。

(AERA dot.編集部・板垣聡旨)

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