●コミュ力って何なの

 ここ数年の売り手市場で、多くの中小企業、ベンチャー企業は採用難にあえぐ。だがビースタイルは、2016年4月に7人だった新卒採用を、17年4月には22人に増やし、内定辞退者も「ほぼゼロ」(柴田さん)。18年4月には約40人の採用を目指す。いまや、大量に集めた学生からコミュ力偏重の面接で少数に絞り込んでいく従来の採用プロセスに疑問を持つ学生の「受け皿」にもなっているという。

 冒頭で社員インタビューをしていた女子学生は言う。

「通常の面接では、さもコミュ力があるかのように自分をつくらなくちゃいけない。すごく疲れます。『質問があればどうぞ』と言われても、その質問自体がコミュ力評価の対象になっているかと思うと、聞きたいことも聞けない。そもそも会社が見ている『コミュ力』って何なんだろうという疑問はありました」

●就活になじまない人

 ここ数年、企業の間にも、お決まりの採用手法では有能な人材を取り逃がすのではないか、という危機感が広がり、定型のエントリーシートや面接の廃止、ゲームやイベントを活用したユニークな評価手法の導入が目立つ。一風変わったマッチングサービスも注目を集める。

 例えば、NPO法人キャリア解放区による「アウトロー採用」。6月初旬、そのワークショップには50人の若者が集まっていた。現役大学生もいたが、多くは29歳までの就業経験のない既卒者。キャリア解放区の代表理事、納富順一さんによれば、

「特に選別はしていないが、参加者の学歴はおしなべて高い」

 のが特徴だという。一方で、

「多くの参加者はコミュニケーションが苦手。働きたくないわけではないし、頑張る意欲もあるけれど、従来型の就活になじめなかったり、意図的になじまなかったりした人たちです」(納富さん)

 彼らはワークショップや合宿で自分たちの感じている違和感や問題意識を共有。その上で、企業の採用担当者との「セッション」に臨む。参加企業は、IT業界を中心に年間でのべ80社。セッションでは企業名は伏せられ、採用担当者は肩書抜きで参加者たちの間に入っていく。語り合うのは、「愛」や「欲」「信頼」「共感」といった哲学的なテーマだ。

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