親の重病は確かに子どもへの影響が大きい。だが、それは必ずしもマイナスだけではない。

 闘病が始まって2年。西口さんは倖さんが変化したのを感じている。以前はわがままを言うことも多かったが、「少し大人っぽくなった」という。

 毎週金曜日に西口さんは抗がん剤を投与し、治療後は、念のため生ものを食べるのを控えている。寿司が大好物の倖さんだが、ふいに「お寿司食べたいなー」と口に出してから、「あ、今度でいいけどね!」と、西口さんの体調を気遣うような言葉が出るようにも。

 子どもに遠慮させているのではと、親として複雑な気持ちもある。しかし、前出の大沢さんは、親の闘病生活を通じ、子どもが我慢や忍耐、思いやりなどを学び、人間として成長するきっかけにもなると指摘する。

 西口さんは、キャンサーペアレンツの取り組みを未来に残すことが、自分らしい倖さんへのギフトだと語る。たくさんの人のために力を尽くす西口さんの背中から、倖さんは日々、多くを学び取っているに違いない。(編集部・市岡ひかり

AERA 2017年7月10日号

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