「この人、父ちゃんと一緒の病気だね」
と、何気なく言ってきたのだ。どうやら病気のことは、妻が伝えていたようだった。その後も明るい調子で、それほど深刻には受け止めていないようで、西口さんはほっと安堵したという。
先のアンケート調査でも患者の73%が「子どもにがんだと伝えた」と回答。このうち87%が「伝えてよかった」と回答しており、子どもへの告白は肯定的に捉えられている。
ただ、西口さんが気がかりなのは、今後病状が進んだ場合だ。もし体調が悪く、思うように動けない時に「遊ぼう」と言われたら。その先、もっと──。
「どうやって病状を伝えていけばいいんだろうと考えるんです」
子どものいるがん患者やその家族を支援するNPO「Hope Tree」代表の大沢かおりさんは、病状を含め、治療の予定などを子どもにオープンにしておくことが、親子の信頼関係を育み、子どもの安心感を生むことにつながるとアドバイスする。米国の研究では、親が病気の子ども(4~18歳)がその病状について十分に説明されなかった場合、20~25%が実際よりも悪い事態を想像してしまうという結果もあるという。
その際に子どもの年齢や発達段階に応じて、伝え方を工夫することが大切だ。
●親の闘病経て成長
就学前の幼児の場合、言葉だけで伝えるよりも絵本などを活用したほうが、理解が進みやすい。また、小学生の場合、例えば「お母さん、最近病院に行って家にいなかったよね。なぜか分かる?」といったように、子どもの理解力に応じて、一方的でなく、少しずつ伝えるのが良いという。
子どもが親の病気を受け入れきれず、ストレスを感じ、おなかが痛くなったり、学校に行きたがらなくなったり、成績が下がってしまったりといった症状が出る場合もある。そんな時のケアは学校側の理解がカギだ。体調を崩しても遠慮せずに子どもが保健室で休めるような体制を整えておければ安心だ。