「コンビニ百里の道をゆく」は、47歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 私がローソンの社長に就任してからよく言われることのひとつに、47歳という年齢があります。世の中には20代の社長もたくさんいますが、相対的にみれば40代の社長は若い部類に入るからでしょう。

「47歳」に強みがあるとしたら、一番は「現実感を持って中長期的な視点に立てること」。10年たっても、57歳です。変化の速いコンビニ業界にあって、当事者意識を持って「5年」「10年」というスパンの戦略を考えることができるのは、大きな強みだと思います。

 半面、人生経験という点では60代の社長にかないません。だからこそ、「衆知を集めた全員経営」を目指し、周りの知恵を集めて団体戦で戦いたい。そうすれば、一人の経験豊富な経営者が一人で判断するよりも、よいビジネスができるはずです。

 とはいえ、普段の私はまったく年齢を気にしていません。ビジネスの世界の先輩であるシニアの方々に囲まれて気後れすることもなければ、新卒社員と一緒に雑談していて「浮いているな」と感じることもない。それは、三菱商事時代に秘書として仕えた当時の社長の影響が大きいと思います。

 赤ちょうちんで部下と飲み明かした翌日に中東の国王に会いに行くような、幅の広さをお持ちの社長でした。

 いつ、どんな人と会うときも自然体。私はそれが不思議で、「よくそんなに普通に国王とお会いになれますね」と聞いたことがありました。すると一言、「だって向こうも同じ人間だろ」と。「自分のキャパシティー以上のものを出そうとしても失敗するだけ。常に自然体でいることで、100%の力を発揮できるのだ」と言われました。それを聞いてから、私も年齢や地位に関係なく、どんな人とも自然体で接してよいのだと考えるようになりました。

 もちろん、自然体でいるには、どんな人とも向き合える知見や見識を積み上げていることが前提です。それゆえ、常に勉強を怠ってはならない。日々、肝に銘じています。

AERA 2017年7月3日号

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