台湾版の「路線図」。海外の路線図作りはデータ集めから苦労するという。ダウンロードはいずれの国のものも無料
台湾版の「路線図」。海外の路線図作りはデータ集めから苦労するという。ダウンロードはいずれの国のものも無料
この記事の写真をすべて見る
TOKYO STUDIO社長 横山勝巳(よこやま・かつみ)さん(42)/ウェブデザイナーやプログラマーを経て2015年に独立。インバウンド客にアピールできるよう所在地と関係のないTOKYOを社名に選んだ(撮影/編集部・福井洋平)
TOKYO STUDIO社長 横山勝巳(よこやま・かつみ)さん(42)/ウェブデザイナーやプログラマーを経て2015年に独立。インバウンド客にアピールできるよう所在地と関係のないTOKYOを社名に選んだ(撮影/編集部・福井洋平)

 トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。VR(バーチャルリアリティー)やスマホアプリで地図どんどん進化する世界や、ブラタモリなど街歩きブームの極意もルポしている。本誌から、路線図アプリの決定版「路線図」を紹介する。

*  *  *

 2015年8月にリリースされた「路線図」は、新幹線、地下鉄、路面電車も含め、北海道から沖縄まで日本全国の800路線、約9300駅を8エリアの路線図の形で見ることができるアプリだ。日本以外に韓国や台湾、香港、タイなど6カ国・地域のバージョンが公開され、各国版を合わせたダウンロード数は2月までに150万に達した。

 たった1人で駅名、路線名などのデータ収集からデザインまでを手掛けているのが横山勝巳さん(42)。小学校時代から路線図好きで自作を繰り返し、いつか全国を網羅する路線図を作りたいと思ってきた。15年に独立し、長野県のベンチャー支援制度を利用して、妻とともに伊那市に移住。1年半かけて日本版のリリースにこぎつけた。

 山手線内や大阪環状線内など駅の多い場所は大きくスペースをとるなど見やすさを意識。一方で、路線のカーブやターミナル駅の路線配置、スイッチバックなどは忠実に再現した。羽田空港アクセス線で並走しているように見える京急線と東京モノレールだが、京急線は直線、東京モノレールは蛇行している。東急大井町線は東海道新幹線の下をくぐり、東急池上線は上から越えていく。車窓の風景を楽しんでもらおうと、山や川、島の名前も路線図内に記載している。

「路線図の決定版にしようと考え、シンプルな名前にしました。『ここで路線が曲がるのか』と、自分の乗る路線に愛着がわくようになってもらえるとうれしいです」(横山さん)

 駅を◯で表し、運行系統ごとに色分けするといった日本でおなじみの路線図は、海外にはほとんどない。海外旅行のたびにそれが不便だったと語る横山さんの夢は、このアプリの全世界版を作ること。現在は鉄道発祥の地、イギリス版を製作中だ。今年3月までには、路線図の駅をタップすることで経路検索ができるようになるという。(編集部・福井洋平)

AERA 2017年2月20日号