移民や難民の入国を制限するトランプ氏の大統領令に対し、ホワイトハウス前であった抗議運動。「われわれはみな移民だ」 (c)朝日新聞社
移民や難民の入国を制限するトランプ氏の大統領令に対し、ホワイトハウス前であった抗議運動。「われわれはみな移民だ」 (c)朝日新聞社
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ニューヨークでの抗議デモの様子。「先祖は1638年に移民として来た」(撮影/津山恵子)
ニューヨークでの抗議デモの様子。「先祖は1638年に移民として来た」(撮影/津山恵子)

 トランプ政権始動から2週間。イスラム圏7カ国の市民の入国を禁止し、「合法との確信がない」と待ったをかけた政府高官をクビにし、メディアと野党を「うそつき」と呼ぶ。「自由の国」が劣化していく。

「卑劣だ。アメリカ的ではない」

 1月29日、米民主党の重鎮、チャック・シューマー上院院内総務が記者会見で、顔を真っ赤にして涙をこらえようとしていた。トランプ氏の大統領令で、イスラム圏7カ国の市民らが米国への入国を阻まれた事件についてだ。トランプ氏は翌日、コメントした。

「チャック・シューマーが昨日、うそ泣きしているのに気がついた。演技指導者が誰なのか、彼に聞いてみようと思う」

 記者団にこう語る彼の後ろでは、ホワイトハウスの女性スタッフが笑っていた。彼は、31日もこうツイートした。

「ナンシー・ペロシ下院議員と『うそ泣き』のチャック・シューマーが最高裁の階段で集会を開いたが、マイクが動かなかった(ひどい混乱だ)、まるで民主党のようにね」

●寛容でない国に変化

 多くの移民で全米一の繁栄を誇るニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、大統領令に反対する市民が空港のデモに行けるように、警察の交通機関封鎖を解除させた。

「J・F・ケネディ国際空港の第4ターミナルに集まれ」

 すかさず、ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーア氏がツイートした。

「ニューヨーカーとして、私はイスラム教徒だ。ユダヤ人だ。黒人だ。ゲイだ。身体障害者だ。ニューヨーカーとして、ニューヨーク社会はこれら全ての人から成り立つからだ」

 と、クオモ知事。他の州知事も会見を開き、大統領令を批判したが、移民・難民当局は連邦政府の管轄で、州知事の糾弾が功を奏するかは不透明だ。

 目が覚めると日々、米国が、寛容ではない国に変化している。まるで「ディストピア(暗黒郷)」だ。リベラル派市民が多いニューヨークでは、地下鉄内で、デモのプラカードを持つ人を見ない日はない。反トランプデモは全米で毎日開かれている。

 しかし一方で、トランプ氏の大統領令は、大統領選挙で彼に投票した、国民の半数に支持され、歓迎されている。ロイター通信などが行った調査によると、イスラム圏の市民の入国禁止は、「強く支持する」と「ある程度支持する」との回答は計49%。「強く反対する」と「ある程度反対する」の計41%を上回った。

 米メディアに、一部の市民もこう答えている。

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