巨額損失発覚で破綻目前の東芝が“虎の子事業”を分社化する。残るは原発事業の片輪走行だが、損失爆弾はその片輪の中。いよいよ秒読みが始まった。
「東芝は一流の技術を持っていますが、経営者がダメだと会社はこうなってしまうんだということを痛感しました」
東芝の若手技術者はこう言ってため息をついた。
医療関連、家電製品と部門が売却されて仲間が減ったうえに、ひとり、またひとりと会社を去っていく。将来性のある優秀な人材から見切りをつけて転職しているのだ。人が減った分、仕事はどんどんキツくなる。将来不安もあって精神を病む同僚も目立ってきた。
●「実質的に銀行管理」
「今も東芝を愛している」というこの若手技術者も、ついに転職することを決めた。技術だけでは会社がもたないことが分かり、経営の経験を積んで技術が分かる経営者になりたいという。
「昨年の段階から東芝は実質的には銀行管理状態だよ」
そう外資系ファンドの幹部は言う。東芝は昨年3月末、東芝メディカルをキヤノンに売却することを慌ただしく決めたが、それも銀行の東芝に対する貸付金を「破綻懸念先債権」など不良債権化しないための「便法」だったというのだ。
実際、本当に売却手続きが完了したのは昨年末になってからだったが、何としても東芝の3月末のバランスシートを見かけ上、債務超過にしたくなかったというのである。粉飾決算で傾いたはずの会社が、決算書づくりのために事業の切り売りを迫られる。何とも皮肉な展開だ。
だが、東芝の“再建策”に、「自社の社員を守るなんて発想はないね」とこのファンド幹部は突き放す。実際、中国の美的集団に売却された家電部門の中堅幹部は「昨年末のボーナスが信じられないほど減った」と嘆く。
過去の粉飾決算のツケを払うだけでも大変だが、昨年末に新たな問題が加わった。東芝の子会社であるウェスチングハウス(WH)が買収した原発建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスターで「数千億円規模」の損失が発生することが明らかになったのである。原発工事の原価見込みが甘く、工事が進むほど、損失として現金が出ていく。まさに「泣きっ面に蜂」だ。