Live in Japan Vol.1
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Live in Japan Vol.2
Live in Japan Vol.2
In Concert from Japan ※上のVol.1と2の2枚組
In Concert from Japan ※上のVol.1と2の2枚組

 1970年代の初め頃までデューク・ジョーダンは知る人ぞ知る存在だった。チャーリー・パーカー・クインテット(在籍:1947-1948年)やスタン・ゲッツ・クインテット(在籍:1952-1953年)の諸作で実力は垣間見えたが全貌を捉えたリーダー作は数枚(Swing, Signal-1.5, Blue Note, Charlie Parker-1.5)しかなく、そのほとんどが「幻の名盤」と化していたのだから無理もない。さらに40歳になった直後に参加したソニー・スティット(アルト)のリーダー録音4曲を最後に廃業に追い込まれ「幻の名手」と化してもいた。4月1日生まれとはいえ冗談では済まない。1972年、既に50歳のジョーダンはバップ~ハードバップ・リバイバルの波に乗って復帰する。復帰後の初録音は盟友セシル・ペイン(バリトン)のリーダー作(1973年3月)だが、北欧を訪れた際に録音した『フライト・トゥ・デンマーク』(同11・12月/SteepleChase)が一躍脚光を浴びる決定打になった。

 同作の哀調を帯びた佳曲群と燻し銀のタッチが我が国のファンを捉えないはずがない。にわかにジャズ喫茶の人気盤となり、ジョーダンの名を知らしめたばかりか広範なファンを獲得したのだ。その発売から2年、初来日の機は熟していた。1976年9月、ジョーダンはウィルバー・リトル(ベース)とロイ・ヘインズ(ドラムス)を引き連れて来日を果たす。リトルはトミー・フラナガンの『オーヴァー・シーズ』(1957年8月/Swe-Metronome)で知られていたが、いまでこそ大御所のロイはチック・コリアの『ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス』(1968年3月/Solid State)の凄腕覆面ドラマーが彼だと知れ渡り、ようやく名手として認知された頃だったと記憶する。推薦盤は福岡公演のライヴ録音だ。当初はLP2枚組で出されCD化の際に3曲(*印)が追加された。同一タイトルの現行版はバラ売りだが徳用2枚組も『イン・コンサート・フロム・ジャパン』として入手できる。

 20曲中、実に15曲が新旧のオリジナルだ。これだけ並べられる者はそうそういない。しかも親しみ易くスタンダードの風格さえ備えている。《ジョードゥ》はクリフォード・ブラウン、《危険な関係のブルース》はアート・ブレイキーを通じて誰しもご存じだろう。オリジナルを眺め渡し、稀有なメロディ・メイカーだったとあらためて実感させられた。リハーサル・テイクの《四月の想い出》で即座に好録音と知れる。楽器毎の質感や微妙なニュアンスまで伝えて遺憾がない。第一部は《フライト・トゥ・ジョーダン》で幕を開けクローザーの《ジョードゥ》で幕を閉じる。快演級はハッピーなフィーリングに包まれた《フォーキャスト》、淡い情感が胸を打つ《ポーラ》、珍しく明るく陽気、腰も揺れだすカリプソ調の《ワトレス》、曲を告げると歓声が湧く代表作《スコッチ・ブルース》、演奏が始まると再び歓声が湧くお馴染み《ジョードゥ》だ。そのほかも好演級と言える。

 第二部は《トゥー・ラヴズ》で幕を開けクローザーの《ジョードゥ》を経てアンコール《フライト・トゥ・ジャパン》をもって温かい交感が奏功したコンサートの幕を降ろす。出来は第二部が勝る。なかでもソロによる妻子への心からの捧げ物《トゥー・ラヴズ》とエリントン・タッチを交えつつ(これが本物!)美しい解釈を施した《ソリチュード》、トリオによる珍しく朗らかでグルーヴィーな《コールド・ボルドー・ブルース》は屈指の名演になった。これらに次いでは、むろん場内が沸く慎ましい《危険な関係のブルース》、優雅な小品《トール・グラス》、絶妙なイントロでパーカーに名演を生みださせたことで知られる粒立ちのよい《エンブレイサブル・ユー》が快演で、ほかも優に好演に値する。珍しく陽気で快活な演奏も交じるが全体からうける印象では佳曲佳演集とすべきだろう。人気盤『フライト・トゥ・デンマーク』にも勝るジョーダンの代表作としてお薦めする。[次回8/19(月)更新予定]

【収録曲一覧】
Live In Japan Vol.1 & Vol.2 / Duke Jordan Trio (Dnk-SteepleChase)

Vol.1: 1. I'll Rmember April*(四月の想い出)2. Flight to Jordan 3. Forecast 4. Paula 5. There's a Star for You* 6. Bluebird 7. Misty Thursday 8. W'utless 9. Scotch Blues 10. Jordu
Vol.2: 1. Two Loves 2. In My Solitude 3. No Problem(危険な関係のブルース)4. Cold Bordeaux Blues 5. Tall Grass 6. I'm Gonna Learn Your Style 7. Embraceable You 8. Night Train from Snekkersten 9. Cherokee* 10. Jordu 11. Flight to Japan

Recorded at Denki Hall, Fukuoka, September 20, 1976.

Duke Jordan (p), Wilbur Little (b, Vol.2-1 & 2 out), Roy Haynes (ds, Vol.2-1 & 2 out).

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。