「プライドが高いのに、健全な範囲での自信に欠けている。自分に立ち入られるのを拒絶するのに、興味を持たれないと不安になるところなんかは似ていると思います。妻に髪を切られながら彼女への不満をネチネチ言うシーンなんかは、私そのものというか……。実生活の私はもっと邪魔なエネルギーを出しますが(笑)」
物語中盤、幸夫は知人の子どもたちの世話を買って出る。その兄妹たちと触れ合うなかで他人のために生きる幸せを知るが、依然、自意識にとらわれ続ける。
「監督からは、いらだちの奥におびえを残して表現してほしいと言われました。弱さ、もろさが見えるからこそ、幸夫への共感も生まれる……。監督の言う通りだな、と」
幸夫は成長していく。自発的にではなく、他者とぶつかりフラフラになりながら。最後は「救い」にたどり着くが、映画はわかりやすい起承転結ではない。
「ほとんどの人生がそうでしょう。僕だって、そう。劇的な変化なんて、あまりないですから」
(文中敬称略)
(編集部・作田裕史)
(AERA2016年10月17日増大号には3ページにわたるインタビューを掲載しています)
※AERA 2016年10月17日増大号
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