![本木雅弘さんのインタビューを掲載している「AERA 2016年10月17日増大号」](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/e/458mw/img_3e241667062051cdfd77bb084fb315bd91549.jpg)
「立ち止まって、スローペースでやってきたから、この役に出会えた」
2012年にロンドンに移住し、東京から距離を置いた。映画主演は、実に7年ぶり。出会った役は自身とも重なる、「こじれた自意識」を持つ悲しき男──。
映画の撮影中に50歳の誕生日を迎えた。芸歴は35年。立ち上る貫禄が、そのキャリアの濃さを物語る。
「昔は自分のエキセントリックな部分をやっかいに思っていました。でも、最近は少しおおらかに捉えられるようになった。この色はもう自分の持ち味なんだ、と動じなくなったというか」
その“色”こそ、映画「永い言い訳」の主人公・衣笠幸夫(きぬがささちお)を彩る「原色」だった。監督の西川美和は、「本木さんこそ幸夫であり、幸夫こそ本木さんだとしか思えない」と断言する。
7年ぶりの映画主演で本木が演じたのは、妻が死んでも涙すら流せないゆがんだ自意識とコンプレックスを持つ有名小説家。糟糠(そうこう)の妻を不慮の事故で失った日も不倫相手と情事にふけり、妻の死後も現実と向き合わずに、ときに酒におぼれながら現実逃避を繰り返す。本木自身とも重なるところがあるという。