



――初めてカメラに触れたのはいつですか
高校生のときです。テニスの試合で海外遠征に行くときには必ずコンパクトカメラを持っていき、試合が終わると友達と街へ繰り出して記念撮影をしていました。ご飯を食べながら「ハイ、チーズ」っていう感じです。私は3人きょうだいの末っ子なので、アルバムの写真がいちばん少ないんですよね(笑)。それが悲しかったので、友達には写真をたくさん残してあげようと思って、パチパチ撮っていました。
――その後はどんなカメラを
キヤノンEOSの一眼レフやIXYデジタル、それとデジタルビデオカメラです。解説者として行ったシドニー五輪では、この3台を首からぶら下げて観戦していたんですけど、それぞれのカメラで撮っていたら、あっという間に表彰式(笑)。撮影に追われて試合をゆっくり見られませんでした。それからはIXYデジタル1台に絞りました。
――なぜデジタルカメラに
データ保存が簡単ですし、プリント写真のようにかさばらないからです。閲覧もパソコンの検索機能を使えば、すぐに見つかりますね。私の画像管理の方法は撮影した年ごとにフォルダを作って、さらに、その中に仕事用とプライベート用フォルダと分けて保存しています。
――テニスのように動きのある被写体は難しいですね
IXYでボールを追いかけていると、フレームからボールが切れてしまうので、なかなかシャッターを押せないんです。選手の表情まで追いかける余裕もありませんでした。そこで2年前、キヤノンに「スポーツ写真を撮りたいんですけど」と相談したら、パワーショットG5をすすめられました。
――コンティニュアスAFとアクティブフレームコントロールがあるから最適ですね
でも、G5を使っていた当時は全然知らなかったんです。取扱説明書はほとんど読まない性格ですから(笑)。試合を撮るときは現役時代の勘で、ボールの軌道を予測して、そこにあらかじめピントを合わせていました。そんな便利な機能があったんですね。(笑)
最近はキヤノンNeW EOS Kissデジタルを使っています。起動が早い点はスポーツの撮影にいいですね。それと望遠レンズがつけられるので、コートから離れた席での撮影には重宝しそうです。
――テニス選手はどのように撮りますか
女子選手は、女性らしさを撮ってあげたいですね。現役時代の私の写真は、険しい表情や叫んでいる顔が多かったんです(笑)。女性ですから、もっと可愛く撮ってほしいですよね。最近はテニスウエアもおしゃれだし、マリア・シャラポワみたいに容姿端麗な選手は一人の女性として撮っても絵になるじゃないですか。ボールを必死に追いかけるスポーツウーマンの強さと、女性ならではの柔らかさにレンズを向けたいですね。
――女性らしさが出る瞬間とはどんなときですか
シャラポワ選手は試合が終わってコートを出る瞬間です。試合になると目つきが鋭くなるけど、コートを出ると表情が柔らかくなる。試合のオンとオフがはっきりしてるんです。浅越しのぶ選手はサービスエースを取った後、表情が豊かになりますね。ガッツポーズで「カモ~ン!」と声をあげるんですけど、可愛いなあって思います。ガブリエラ・サバティーニ選手はダイナミックなフォームのなかに華がありましたね。風になびく髪が美しいんですよ。
シャッターチャンスは選手によってそれぞれ違いますけど、表彰式ではどの選手も素の表情が出ます。試合が終わったという安堵感で緊張がほぐれるんです。この時間を撮るのがいちばん好きなんですよ。なかでも2週間戦い抜くグランドスラムの表彰式は特別ですね。
※このインタビューは「アサヒカメラ 2005年6月号」に掲載されたものです