驚くような地方再生のケースが広島県に!?(※イメージ)
驚くような地方再生のケースが広島県に!?(※イメージ)
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 アエラ本誌で連載を行っている投資銀行家の山口正洋氏は、現在の地方再生のやり方に疑問を感じるという。一方で、そんな山口氏が驚くようなケースが、広島県にあった。

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 地方再生に携わっている私が、いつも不思議に思うことがあります。ゆるキャラに始まり、B級グルメ、「道の駅」に至るまで、どこもかしこも同じことをやって、ことごとく失敗に終わるのはなぜか。「2匹目のどじょう」を狙っていればうまくいく時代は、確かにありました。高度成長期には、膨大かつ均質な需要が存在したために、速く安く大量につくる供給力を持った大企業が勝ち残ったのです。パナソニックはその昔、松下電器産業という社名でしたが、「マネシタ電器」とも呼ばれ、他社が出してヒットした商品に似たものを安く大量に売ってもうけるビジネスモデルでした。

 経済学ではこれを「需要・供給モデル」で説明できます。横軸に数量、縦軸に価格をとり、供給曲線と需要曲線の交点で価格が決まるという、あのグラフです。需要が満たされ供給過剰になると、交点が低くなる、つまり価格は下がる。すると需要が刺激されて、今度は価格が上がる。いずれどこかで価格が均衡する──。

 現代もこのモデルは通用するのでしょうか。たとえばシャープが倒産寸前に追い込まれる一因になった液晶テレビ。先のモデルによれば、大量に供給されると価格が下がり、需要も増えて、価格はどこかで均衡するはずでした。でも、40型の大型液晶テレビが仮に3万円になったからといって、皆さん、買うでしょうか。そもそも多くの消費者は、液晶テレビにたいした興味はなく、ほかにお金を使うところがたくさんあると考えている。

 もはや、モデルの大前提が崩れているというしかありません。未来永劫変わらぬニュートン力学とは違い、経済学はまことに科学の名に値しない学問といえます。

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