アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はみずほ銀行の「ニッポンの課長」を紹介する。
* * *
■みずほ銀行 ALM部 ALM総括チーム 参事役 佐藤千佳(38)
300人ほどが働く広いディーリングルームは24時間、世界中のマーケット情報や経済ニュースが飛び交う「戦場」だ。
そこで二つのモニターを見ながら取引をする佐藤千佳の仕事は、みずほ銀行の債券を国内外の機関投資家向けなどに発行し、銀行が貸し出しなどに使う資金を調達することだ。
「直前までマーケットを見て判断しますので、その日の朝にやめるということもあります」
佐藤は東京大学経済学部を卒業後、2000年に入行。市場営業部や総合資金部(現・資金証券部)を経て、13年10月からいまのALM部で働く。アセット(A=資産)とライアビリティー(L=負債)を総合的にマネジメント(M)する部署だ。
突発的なことがいつ起こるかわからない市場を相手にするのは、やはり緊張する。
「予想できることはすべて潰しこんでおきますが、予想しないことが起きても、適切に対応できたときは、達成感がありますね」
就職氷河期世代の佐藤は、入社2年で銀行が合併、その後、リーマン・ショックや東日本大震災も経験した。
「平時から、何かが起きた時のための準備をしておこうと思うのは、そのせいかもしれません。今日できることは明日に持ち越さないように、心がけています。思っていても実践できていないことも多々ありますが」
指導する後輩に声をかけられたら、必ず仕事の手を止めて話を聞くようにしているのも、その一環だ。
「マーケットでは、判断を後回しにすると取り返しがつかなくなることがあるので」
息抜きはお酒を飲むこと。時には朝まで友人と飲むこともあるほどだ。
11年、震災をきっかけに結婚。仕事と家庭の両立が難しいと思うこともあるが、
「仕事も家庭も危機はあるものだと思って、平時に備えをして、時に夫に協力してもらいながら乗り越えていこうと思います」
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・大川恵実)
※AERA 2015年10月12日号