かつては日本でも?(※イメージ)
かつては日本でも?(※イメージ)
この記事の写真をすべて見る

 フォルクスワーゲンは排ガスの不正操作で、ユーザーの信頼を木端微塵に崩壊させた。だが、排ガスを抑える触媒機能「無効化」が、日本でも行われていた。

「これはなんだ。NOxが急に増えているぞ」

 東京都江東区にある都環境科学研究所。排ガスを調べる検査車台にいすゞ自動車が売り出したばかりの中型トラック「フォワード」が載っていた。いまから4年半ほど前のことだ。

 エンジンが回り出して4分後、研究者の間にどよめきが起きた。100ppm前後で安定していた窒素酸化物(NOx)の数値が急上昇、300ppmを超えた。浄化機能が働かない──。

 都は2011年6月3日、調査結果を公表した。

「最新排出ガス規制に適合するディーゼルトラックにおいて、排出ガス低減性能の『無効化機能』が発見されました」

 60キロの定速走行が4分続くと触媒の作動を止めるソフトが、エンジンに組み込まれていた。都は国土交通省に対して、道路運送車両法違反で通報するとともに「無効化機能を禁止する法整備」を急ぐことを求め、いすゞには、問題車両を回収するなどユーザーへの措置を速やかにとることを求めた。

 同日、いすゞは国交省に「改善計画」を提出。車両を回収してソフトを改めると約束した。

「リコールではありません。わが社のケースは保安基準を満たしているので違反ではない」

 いすゞの広報はそう説明する。確かに、政府が採用する走行モード(JE05)では問題は起きていない。「特殊な走り方をするとNOxが出たのでプログラムを変えた」のだという。JE05にはさまざまな運転条件が組み込まれているが、「定速4分」という条件設定はない。その盲点を突き、4分後に無効化のスイッチが入る仕掛けだった。

「60キロの定速走行で浄化装置が利かないのは問題です」と都は言う。検査場ではいい数値だが実際はNOxが出まくり、というのではフォルクスワーゲン(VW)と変わらない。

AERA 2015年10月12日号より抜粋