アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はタカラトミーの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■タカラトミー ガールズ事業部リカちゃん企画部 マーケティング課 課長 椎葉彰(38)
リカちゃんのやさしいパパ、香山ピエール(36)に4月末、2代目が登場した。きれいなママ、織江(33)は、数年おきに顔立ちやスタイルが見直され、現在は6代目だが、パパは1989年の登場以来、初めてのリニューアルだ。21世紀の理想の父親像を映し出すパパは、音楽家で、いまは1年間の育休中。しかも「イクメンオブザイヤー2014」なのだ。
リカちゃんシリーズの商品企画やプロモーションを担当する椎葉彰は言う。
「人形は、女の子にとっていまの自分の分身であり、理想の姿でもあります。それは時代によって変わるもの。伝統を守りながらも少しずつ進化させ、愛され続けてほしい」
67年の発売以来、累計出荷数は5300万体を超える。大人なら誰もが知る着せ替え人形も、子どもたちにとっては初めての出合い。今どきの女子が何を求めているのか探り、商品にどう反映させるか、考えを巡らせる。
法政大学法学部を卒業して99年、旧トミーに入社した。ずっと営業を担当してきたが、リカちゃんブランドを持つ旧タカラと06年に合併すると、4年後に現在の部署に異動。この看板ブランドを任された。
昨年は「くまモン」カラーのドレス姿や、サッカー日本代表のサポーター姿のリカちゃんを発売。ファッション誌「VERY」とコラボしたリカちゃんの服は、オシャレなママたちが着ているリアルクローズをイメージ。子どもにもファッションセンスを磨いてほしいという“母心”を込めた。
工場では、細かい手作業が多い。ドレス一着でも、構想から発売まで半年以上かかる。リカちゃんハウスなどの大型商品になると、2年以上を要することもある。
「リカちゃんは先輩が創り出した玩具業界の大きな財産。それを背負うプレッシャーをいつも感じています」
やさしいパパのように、リカちゃんの幸せな未来のために働いている。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2015年6月8日号