都会で働く者にとって、地方移住のネックになるのが仕事探し。でも、地方でこそ都会人にニーズはある。地方で仕事を見つけるためのツールも生まれている。
木を強く蹴ってゆすると、カブトムシやクワガタが落ちてくる。触るのは初めてという子もいて、歓声が上がる。
「虫取り名人の虫取り講座」
宮崎県日南市で行われた体験型観光プログラムの一つだ。どんな田舎にもいる虫、そして虫取りの名人。これを観光のネタに変えてしまう企画に仕立てたのは、「外からの目線」だ。従来のハローワークではなく、ビジネスSNS「ウォンテッドリー」を利用して、市外から採用した担当者が企画した。
「ウォンテッドリーには、新しい動きにアンテナを張り、社会貢献意識が高い人が集まっている。仕事の内容を魅力的に伝えられれば、反応してくれるユーザーが多いと感じていました」
そう話すのは採用を担当した日南市商工政策課の田鹿倫基さん。市の「マーケティング専門官」を務める。田鹿さん自身も、Uターン転職した一人だ。
仕事を作り出し、日南市に雇用を生み出すことがマーケティング専門官の役目。地元の資源を生かす事業を作っていくには、地域の強みを客観的に判断できる外の目が必要だ。ウォンテッドリー経由で採用した担当者が生み出した事業で、さらに街に人を呼ぶことに成功している。
ウォンテッドリーでは、フェイスブックを通じて情報がシェアされ、人を通じて拡散していく。結果、転職活動をしていない人にもリーチできる。日南市の場合も、求人に予想を大きく超える70人以上の応募があった。
ほかの転職サイトと異なり、給与については書かないというルールもある。地方の仕事が、東京に比べ給与面で見劣りすることが多いのは事実だ。給与ではない仕事の魅力を前面に出せるのも、「地方の仕事と相性がいい」と田鹿さんがウォンテッドリーを評価する理由だ。
※AERA 2015年9月14日号より抜粋