アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はティアの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■ティア ティア越谷支配人 藤井敬介(40)
葬儀社「ティア」(本社・名古屋市)の支配人、藤井敬介は、高校のころからロック好き。自分の葬儀をやるとしたら? 取材のために演出した自らの生前葬の祭壇には、飾り花でギターをかたどった。遺影のポーズは、デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」にオマージュを捧げたものだ。祭壇を眺めて数秒。藤井は晴れやかな顔で、こうつぶやいた。
「こんな最期だったら、最高ですね」
いまどきの家族のあり方は、多様だ。葬儀に人を呼ぶのか、家族だけなのか。どのぐらいお金をかけるのか。一様ではない。だからティアは、葬儀にかかるモノやサービスを選択できるようにした。
わかりにくい葬儀の費用も透明化。「中身を『見える化』した葬儀」(藤井)によって業績を伸ばし、2014年9月期の売上高は95億円に達した。運営する葬儀会館は、東海地方を中心に全国で70を超え、東証1部への上場も果たした。
藤井は中京大学法学部を卒業後、アパレル会社、保険会社を経て、30歳でティアに転職した。
打ち合わせのため、遺族の家をたずねると、「故人の人生が見える」という。釣り好きなら大きな魚拓、バイク好きの故人ならバイクやウェアが、主なきまま置かれている。人生の最期、好きなモノに囲まれて旅立つのもいい。藤井は、遺族にこう提案をするのだ。
「飾ってあげたらいかがでしょうか?」
人の死は明るく受け止められるものではないが、葬儀が必ずしも沈痛でなければならないという理由もない。自身の仕事について、藤井はこう思っている。
「人の最期を彩るコンシェルジュ」
葬儀が終わった後、目を赤くした遺族から「ありがとう」と言われ、実感する。
「こんな仕事にはめったに出会えるものではない」(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2015年5月4日―11日合併増大号