出産直後の女性は体やホルモンバランスの急激な変化から、精神的に不安定になりがちだ。なかには、「産後うつ」の前兆の場合もある。そんなとき、夫はどうすればいいのか。
産後女性のボディケア&フィットネス教室を展開するマドレボニータのインストラクター・吉田紫磨子さん(44)は4人の子の母。第1子の出産後、産後うつになった。
吉田さんは1人目の出産時に仕事を辞め、専業主婦になった。一方、夫は仕事へのスイッチが入り、帰宅は夜中の2時、3時だったという。
「私の機嫌が悪くなっていくのを夫も察知しましたが、どうしていいかわからず、とりつくろうように『赤ちゃん、かわいいね』などと言う。その言葉がいっそう私をいらだたせました」
第2子の出産のときは実家への里帰りをやめた。夫が“お客さん”となり、父として育たないからだ。夫は10日間の有休を使って、妻を安静にさせ育児と家事を担った。
「赤ちゃんがギャン泣きしたとき、夫がチッと舌打ちした瞬間があったんです。やっとわかってもらえた、と嬉しくなりました。赤ちゃんがかわいくないわけではないけど、舌打ちせずにはいられないのが、子育てのリアル。最初の出産のとき、欲しかったのはこうした『共感』でした」(吉田さん)
育児に積極的に取り組むイクメンも増えた。しかし、短時間の気楽な「いいとこ取り」育児で、「育児しているオレ」「家事しているオレ」のドヤ顔をSNSにアップして、妻との関係が悪化するケースもある。
産後うつの自助グループ・ママブルーネットワーク代表の宮崎弘美さん(47)はこう話す。
「夫にとって、何よりも大事なのは、『がんばっているね』とねぎらいの言葉をかけることと、『何をしてほしいか』を妻に聞くことです」
※AERA 2015年7月6日号より抜粋