アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は大阪府 日本万国博覧会記念公園事務所の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■大阪府 日本万国博覧会記念公園事務所 営業推進課 課長 平田清(56)
1970年の大阪万博で異彩を放った岡本太郎作の「太陽の塔」。中に入ると、まず赤い鱗のような壁が目に飛び込んでくる。中央には高さ41メートルの「生命の樹」。色鮮やかな枝に三葉虫やアンモナイト、恐竜、人類などの造形群が乗っている。閉鎖されて約44年。かなり壊れているものの、当時の“熱”は朽ちずに空間を満たす。
塔の内部は耐震上の問題から非公開になっているが、大阪府は2年後の3月をめどに常時公開する方針だ。平田清は、この公開へ向けて展示物などの改修プロジェクトに携わる。
「私はとても幸運。後世にずっと残る施設を担当し、常時公開の大仕事にかかわれるのですから。オープン後は、大阪万博のように国民の2人に1人が訪れていただければ」
生命の樹にあった生物群は、約160体を復元し、保存している40体を再び設置する。人々を乗せて40億年にわたる生物の進化を案内したエスカレーターは、撤去して階段に。地下展示空間にあった「地底の太陽」は、万博終了後に行方不明になっているが、今回、これを原寸大で忠実に復元する。
平田は大阪府内の農家に生まれた。農業大学校で造園について学び、日本万国博覧会記念協会(現大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)の緑地課に就職した。10年前に営業推進課に移り、万博の遺産を活性化させるための将来ビジョンの策定にかかわる。太陽の塔内部の常時公開も、活性化策の一環だ。
ただ、内部公開には耐震工事が必須で、多額の改修費が要ることから、反対意見も多かった。3年前の耐震工事の入札不調によって一度はあきらめかけたが、ようやく着工できるめどが立った。
展示物の復元にあたっては、1億円を目標に寄付金を募る計画だ。
「三葉虫1匹からでも復元費用の寄付を、なんてことも考えています」(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・西元まり)
※AERA 2015年3月9日号