食をテーマにした「直球の映画は初めて」という柴田昌平監督。今作を通して、先祖が守り伝えてきた和食文化を、未来を担う若い世代、できれば子どもたちに伝えたいと話す(撮影/元木みゆき)
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食をテーマにした「直球の映画は初めて」という柴田昌平監督。今作を通して、先祖が守り伝えてきた和食文化を、未来を担う若い世代、できれば子どもたちに伝えたいと話す(撮影/元木みゆき)
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 主役は、日本独自の出汁や、麹菌の活動を利用して造る醤油。自然と関わる暮らしの中で生まれた食べ物を利用する和食文化を、壮大なスケールで描いたドキュメンタリー映画が公開中だ。

「千年の一滴 だし しょうゆ」は、出汁(だし)と醤油にテーマを絞り、和食を人と自然との関わりから描くドキュメンタリー映画だ。日本で出汁を使うようになって約千年。その歴史も紹介する。

 人と自然を描くドキュメンタリーのテレビ番組や映画を作ってきた柴田昌平監督(51)が、このテーマに挑んだきっかけは2007年、前作の映画「森聞き」の取材で、宮崎県椎葉村で焼き畑農業を行う椎葉クニ子さん(90)に出会ったことだった。

「何千年も続く焼き畑農業に誇りを持つ彼女にとって、山に生えるすべての草に意味がある。その知恵のありかを知りたい」

 焼き畑に密着した映像を作りたい、と考え注目したのが、森を焼くと最初に生える椎茸だった。歴史を調べるうち、背景にある食文化に興味を持った。

 その後、12年に出汁をテーマにしたNHKの番組を制作。その際、かつお節誕生も、出汁という言葉の誕生も17世紀と気がつく。日本には肉食を公的に禁じてきた歴史がある。もしかすると、17世紀は肉に代わる旨みを発見した食の革命期だったのでは、との考えに至り興奮する。

 制作した番組が14年8月、フランス・ドイツの共同出資の放送局ARTEで放送され、1カ月間で5回もアンコール放送されるほど大反響を呼んだ。

 これまでの活動の集大成といえる今作は、2部構成。前編が「だし」。後編が麹菌に焦点を当てた「しょうゆ」だ。

 東京大学で麹菌を研究する北本勝ひこ教授の元に10回以上通って台本を練り、日本独自のニホンコウジカビ誕生から現在の醤油醸造に至る物語を描いた。

「テレビと違い、映画は見る人数は少ないが持続性がある。特に未来を作る若者に見てほしい」と柴田さん。

AERA 2015年2月16日号より抜粋