アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は図書印刷の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■図書印刷 第四営業本部 担当課長 鈴木敬二(50)
スタジオジブリが世に送り出すのは、何も映像だけではない。原画集から劇場用パンフレットまで、数多くの出版物がある。図書印刷は、その印刷をほぼ一手に引き受ける。そんな会社で「ジブリ番」を20年担ってきたのが、鈴木敬二だ。
「ジブリの印刷物って、色が大変でしょう」
そう何百回とたずねられてきた。その度に「図書印刷は、ずっとこれをやってきたんだ」という自負が胸に湧き上がる。
この仕事には、勘所がある。
「自然の色や光。緻密な構造物や生活空間。人物もさることながら、スタジオジブリの作品を特徴づけているのは、背景なのです」
そんな映像を何度も見返し、脳裏に「ジブリの色」を焼きつける。実作業を担うスタッフは、すべて専任。ともに経験を積んできたから、いちいち説明せずとも、「あ・うん」の呼吸で仕事ができる。
専修大学卒。電機関係の商社で営業マンを務めた後の1991年、図書印刷に転職。その頃から同社ではジブリの出版物を扱っていて、鈴木は担当営業を任されると、先輩から“仕上がり”に対するジブリの厳しさを徹底的にたたき込まれた。
「勘所をつかむまで3、4年かかりました」
受け取った素材は、だれが、どんな考えに基づいてつくったのか。監督やスタッフによって、ディテールの描き込み方や色づかいが微妙に違う。そうした一人ひとりの“癖”は、何度もジブリの現場に足を運んだからこそ、つかむことができる。疑問があれば、直接、本人と話して確認する。
沼津工場(静岡県)では、最新作「思い出のマーニー」の関連書籍の作業が大詰めを迎えていた。ページごとに書き込まれた色やディテールへの指示を、ジブリ出版部のスタッフとともに最終確認する。ジブリには、鈴木の目が欠かせない。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2014年8月11日号