教師と親は、互いの主張が対立することが少なくない。同じ子どもの成長を願うもの同士、分かり合うにはどうしたらいいのだろうか。専門家らに聞いた。
教師たちが働く学校という職場では、「ブラック化」が深刻な問題となっている。文部科学省が2006年に実施した調査では、小中学校教師の残業時間は1カ月あたり約34時間。40年前に比べ、実に4倍に増えていた。
一方で、親も同様に忙しい。共働き世帯の数は1997年以降、専業主婦世帯を上回っている(厚生労働省「労働力調査」)。平日昼間のさまざまな行事に親が合わせることは、物理的に難しいのが現実だ。首都圏に住むある母親(42)は、こう話す。
「年度初めに行事予定が配られているのは承知しています。でも、電話で急に『明日の面談なんですが』と切り出されても無理なんです。日程を再調整したくても、先生は時間までピンポイントで指定してくる。結局、面談は実現しませんでした。事前に複数の案を出してお互いの予定をすり合わせるのが常識じゃないですか」
その通り。しかし、1クラス30人だとして、それぞれの親に複数の予定を提示してすり合わせることも現実的ではない。学校トラブルに詳しい大阪大学大学院教授の小野田正利さんは、教職員への調査から、「保護者から学校への無理難題要求が増えてきたと8割近くの教員が感じていて、90年代後半から増加傾向にある」と分析する。