企業のグローバル化が進むなか、世界でモノやサービスを売る人材は貴重な戦力だ。世界を舞台に活躍する人材、その魅力はどこにあるのかを取材した。
農機具大手のクボタで海外営業を担うホワン・ティー・マイさん(32)は、入社3年目の社員だ。ベトナム人ならではの「おもてなし営業」で昨年、母国のベトナム政府が発注した水処理プラント案件を獲得した。
「100家族の嫁」
多様な人に、柔軟に対応できるベトナム女性を評した言葉。マイさんも、その気質をいかんなく発揮した。相手の担当者は、設計から進捗管理まで15人もいた。まずは個々の性格を見極めた。プライドが高そうな技術者には反論せず、時間をかけて根拠となる資料を提示。「クボタが正しい」はNGワードだ。スケジュールを決めたがらない国民性も承知の上。現地に2カ月滞在し、膨大な協議項目を一つひとつこなしていった。
日本の先進的な技術を生かし、環境汚染が深刻化する母国の窮状を解決したい、との思いからクボタに入社したが、
「これで一つ、恩返しができました」
とマイさん。営業社員としての自信も深め、
「営業を成功させるカギは相手を思いやる心。それを忘れず、次の案件に邁進したいです」
※AERA 2014年5月5日―12日合併号より抜粋