親と子をつなぐものは過ごした時間の濃密さなのか、遺伝子なのか。近年増えている親子DNA鑑定は、「そして親になれない」親たちの姿も映しだす。
千葉県在住の会社員女性(30代後半)は昨年、既婚の交際相手との間に未熟児を出産した。「妻とは別居状態ですぐ別れる、結婚してほしい」という言葉を信じてつきあっていたが、それは真っ赤な嘘。生まれた子どもに障害があると知ったとたん子どもの病院に来なくなり、生活費も「障害者手当で賄えばいい」と言い振り込まなくなった。弁護士を立てて子どもの認知を求めたら、彼の弁護士側からDNA鑑定を要求された。鑑定のため病院に来た彼は、子どもの顔すら見なかった。結局、親子関係は証明された。
「私がつわりで苦しんでいる時に『堕胎したらいい、自分が離婚できるまで待ったほうがいい』と言われたこともあった。結局子どもからも私からも逃げようとしかしていないんだなと、悲しくなるより笑ってしまいましたね」
離婚の増加に伴い、親権欲しさにDNA鑑定を行うことも今後増えるとみられるが、それでもDNA鑑定は開けてはいけない「パンドラの箱」だと関係者は口をそろえる。東京家族ラボ主宰の池内ひろ美さんは、こう話す。
「法律婚関係にある夫婦の子どものDNA鑑定はお勧めしません。家族にとって一番大切なのは情緒的つながりであって、すべてを科学的に明らかにする必要はないと思います」
夫の要望でDNA鑑定に踏み切った結果、血縁関係があるとわかったが、結果的に離婚に至った夫婦もいた。
※AERA 2014年1月27日号より抜粋