電気料金の値上げなどを背景に、東京電力の中間決算が1400億円の黒字に転換した。一方で、東電が負担する除染費用の追加発生分は国が負担するという話もあり、巨額の国費も投入されようとしている。

 確かに、事故の責任をすべて東電に負わせるのは、はじめから無理があったのだろう。国策として原発を推進し、安全規制をなおざりにしてきた歴代政権の責任も大きい。しかし、東電が黒字を出す一方で巨額の国費投入が決まるのは、税金を納める身としては釈然としない。NPO原子力資料情報室の伴英幸共同代表もこう強調する。

「被害者である国民の税金を投入するのであれば、まずは東電を破綻処理(法的整理)し、東電の株主や貸し手である金融機関の責任も追及すべきだ」

 この責任論がうやむやのまま話が進んでいくのには、ワケがある。東電の黒字化と、政府の国費投入決定──一見、矛盾したこの二つの動きは、実は連動している。その目的はただ一つ、「東電を破綻させない」=「銀行の債権を守る」ことだ。

 AERA9月30日号でも指摘したように、東電を破綻処理しないまま巨額の国費を投入するということは、銀行がこれまで東電につぎ込んだ4兆円の出融資を守り、すべてを国民につけ回すことに他ならない。元経産官僚の古賀茂明氏は言う。

「タイミングは、12月に予定されている2千億円の借り換えと、3千億円の追加融資です。今回、政府が全面的にかかわることを表明したのは、銀行に対し、国がカネを入れるので絶対に大丈夫だと示すため。東電や銀行の責任をうやむやにして、悪い部分はすべて国が引き受けるという話ですから、廃炉事業を切り離された東電は健全な会社となり、銀行にとって最高のお客さんになります」

 政府の姿勢は一貫している。9月時点で首相自らが汚染水対策をぶち上げたのは、10月にあった約800億円の借り換えのタイミング。今回の東電の黒字決算も、12月の融資継続のためのシナリオに沿うものだ。

「官邸も経産省も原子力規制委員会も、東電がいかにひどいか叩きまくっています。それで国民やマスコミから、国がもっと前面に出ないとダメだ、と押される形を演出したわけです。実は、これで国民は4兆円損する。『前政権が』と民主党のせいにするけれど、その仕組みは自民党も一緒に作ったんですからね」(古賀氏)

AERA  2013年11月18日号より抜粋