手作り化粧品は、レシピどおりにきちんと材料を量るのが鉄則。また防腐剤などを含まない分、劣化するのも早い。清潔な道具で少量をまめに作り、使い切るのが理想だ(撮影/写真部・植田真紗美)
手作り化粧品は、レシピどおりにきちんと材料を量るのが鉄則。また防腐剤などを含まない分、劣化するのも早い。清潔な道具で少量をまめに作り、使い切るのが理想だ(撮影/写真部・植田真紗美)
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 このところ「安心・安全」な化粧品を手作りしようという女性が増えている。好きな材料を選べるうえ、安価で簡単にできる手作り化粧品には多くのメリットがある。しかし、「ナチュラルでやさしい」はずの手作り化粧品が、扱い方を一歩間違えると肌に爪を立てるワルモノへと豹変する危険をはらんでいることは案外知られていない。

 基礎化粧品の作り方は、驚くほど簡単だ。化粧水なら、精製水にグリセリンを混ぜるだけ。さっぱりさせたいなら、これを無水エタノールに変えてもいい。香りづけに精油やハーブを加えたり、保湿力を高めるオイルや、美白効果が期待できるエーデルワイスエキスを追加するなど、好みで自在にアレンジが可能だ。しかも、精製水は500ミリリットルで200円弱、エタノールは同1500円程度、グリセリンは500グラム1千円前後と、普通の薬局でも、安く手に入る。

「美容も気から。ケミカル成分含有の化粧品でケアするより、ハーブやアロマで自作したほうが、肌に合うものが作れるし、肌も心も喜ぶ気がします」

 手作り化粧品の魅力をこう語るのは『手作り石けんと化粧品でナチュラルスキンケアきほんBOOK』などの著書がある羽鳥冬子さん。だが、同時に「自己流が行き過ぎると危険」と警鐘を鳴らす。化粧水に入れるグリセリンには、保湿効果とともに吸水性がある。化粧水中で10%前後の濃度が限度だが、しっとりさせたいあまりに欲張って入れすぎると、元々肌にあった水分まで奪い取ってしまい乾燥が進む原因に。さらに、香りづけに使う精油も、グレープフルーツやベルガモットなどの柑橘系のものには、紫外線に当たると炎症を引き起こしたり、濃いシミを作ったりする光毒性がある。レモングラスやカモミールなどのハーブも油断はできない。レモングラスはイネ科、カモミールはキク科の植物。気がつかずにアレルギー症状を引き起こす危険性も否定できないからだ。

 緑茶の自家製パックでかぶれた、アロマオイルを入れた化粧水で湿疹が出たなどと訴える患者を診察した経験を持つ皮膚科の吉木伸子医師は注意を促す。

「植物エキスなどの自然に近い素材はそもそもかぶれやすい。肌が弱いからと100%オーガニックや手作りに切り替えるのは、実はおすすめできません」

AERA 2013年10月21日号