須川さん(左上)ら作家たちと菅井さん(同下)。脚を壁に見立てたグラフィティ柄(右上)や、美脚願望を表しフラミンゴを模したタイツも(撮影/村上宗一郎)
須川さん(左上)ら作家たちと菅井さん(同下)。脚を壁に見立てたグラフィティ柄(右上)や、美脚願望を表しフラミンゴを模したタイツも(撮影/村上宗一郎)
この記事の写真をすべて見る

 日本生まれのタトゥータイツが世界中に広まった2012年。さらに先を行くタイツシーンが、またも日本から発信されている。

「売られているタイツに飽きたんです。自分がはいてみたいと思えるタイツがほしい」

 そう話すのは、アートディレクターで、タイツブランド「tokone(トコネ)」のプロデューサー菅井葉月さん(32)。2012年11月、レッグウエアなどの制作会社ティー・ケー・ワン(東京都世田谷区)内でtokoneを立ち上げた。

 画家、詩人、ミュージシャン…ジャンルを問わずにアーティストと交流しながらのタイツ制作。色が明確に出るポリエステルと、皮膚に馴染む薄手のナイロンの2種類から作品に適した素材を選ぶ。淡い水墨画風、蝶の羽を両脚に模したデザイン…現在17人、30種類のラインアップがある。国内や海外のセレクトショップに置くほか、オンラインでの販売が中心だ。

 幼少時をアメリカで過ごした菅井さんは、帰国して周囲に違和感を持った。

「右がブルー、左が紫のスパッツをはいて学校へ行くとからかわれた。日本では女の子は目立っちゃいけない。どうして自分の好きな格好をしていると周囲と馴染めないんだろうとコンプレックスだった」

 学生時代に通販の若い女性向けファッションカタログ制作に携わった。今はこれがはやっているからと、経営陣の中高年男性がスタイリングを仕切る。ディレクターとして消費者目線の若い風を業界に入れたい。ある時テレビでカラフルなタイツを身に着け、虹色の髪をした作家の志茂田景樹さんを見た。「好きなものを身につけて堂々としていいんだ!」と悩みを吹き飛ばされた。

 自分の好きなタイツが主役のファッションシーンを作ろう。ブランド第1弾は、青やピンクの水滴が重なりあうような「KAMAKIRI」。志茂田さんをオマージュしてデザインした。

 イラストレーターの須川まきこさん(38)の作品「深夜の森」は、はくと脚全体に蝶や草花のレース画がまとわりついたよう。

「タイツをキャンバスだと思って、売り上げも意識せず自由に描いてと菅井さんに言われ、楽しく作れた」

 須川さんは8年前に血管肉腫で片足を失い、義足となった。

「とんがった強さのあるtokoneタイツをはくと、自信のない部分を補ってもらえるようで、自分らしくいられる」

 須川さんの3作目「Nurse」は、義足の人がはいても股関節の器具部分で破れないよう、左右で色の違うニーハイソックスになっている。

AERA  2013年9月16日号