村井純(むらい・じゅん)慶応義塾大学環境情報学部長。1955年東京生まれ。慶応義塾大学工学研究科博士課程修了。2009年から現職。「日本のインターネットの父」と呼ばれる(撮影/今村拓馬)
村井純(むらい・じゅん)
慶応義塾大学環境情報学部長。1955年東京生まれ。慶応義塾大学工学研究科博士課程修了。2009年から現職。「日本のインターネットの父」と呼ばれる(撮影/今村拓馬)

 これまで多くの企業家たちを輩出してきた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)。独特の学生が集うその環境について、村井純・慶應義塾大学環境情報学部長は次のように話す。

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 在学中からベンチャーをやっている学生がSFCには多いですけど、見ているとすぐ周囲の友達を引き込むんですね。人材の多様性が高いから、「オレ、いいアイデア持っているんだけど、お前、ソフトウエア書いてくれない?」「ウェブのデザインはアイツがうまい」と言って、才能のある人をすぐ集められちゃう。卒業していったん就職しても、同級生で面白いことやっているヤツのことを思い出して、「じゃあ、会社やめて一緒にやろうか」となる。人材流動性が高いんです。ITベンチャーの中核には、やっぱりSFC出身者が多い。今でも有名IT企業のトップがしょっちゅう、キャンパスをウロウロして、「人さらい」に来ていますよ(笑)。

 とがっているヤツは相変わらず来ていますね。特にいいのは、地方出身でAO入試で入ってくる学生。「AO入試組なんてバカばっかり」と2ちゃんねるで書かれていることは知っていますが(笑)、我々はAO入試に絶対的な自信がある。1990年に始めて23年、いい学生を取るためのシステムを作ってきた。一芸に秀でた学生、たとえば「子どものころからナマコの研究ばっかりしていて、海外で発表もしました。でもナマコのこと以外は何も知りません」というような子も入っていますよ。どうやったらその子がナマコに対する熱意を保ちつつ、新しい友達に出会い、新たな力をつけて卒業していけるか。そこまで考えて入試をしているんです。

 AO入試、9月入学など、SFCが最初に導入し、他学部がそれに続いた制度もある。慶應義塾は「未来を先導する大学」ですが、SFCはさらにそのなかのパイオニア。失敗してもリスクを取れるキャンパスでありたいですね。

AERA  2013年7月22日号