ザ・サード・マン/エンリコ・ラヴァ&ステファノ・ボラーニ
ザ・サード・マン/エンリコ・ラヴァ&ステファノ・ボラーニ
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静かなダイアローグを重ねるイタリアン・デュオの新作
The Third Man / Enrico Rava & Stefano Bollani (ECM)

 去る5月に来日公演を行った新旧イタリアン・デュオ・チームの新作である。そのステージは意外なことに、ユーモラスな小芝居を交えたもので、長年様々なアルバムを通じて抱いていたシリアスなイメージを、ラヴァは覆してくれたのだった。お茶目で親しみやすいキャラクターとのギャップにより、多くの観客がその存在を強く印象付けられたと思う。

 ラヴァとボラーニは親子ほどの年齢差があり、ボラーニがラヴァのグループに抜擢されたことから関係がスタート。現在ボラーニはピアニストの座を譲り、ラヴァとのデュオで活動中だ。本作はライヴ盤に続く、初のスタジオ・デュオ録音ということになる。

 プログラムのうち2/3を両者のオリジナル曲で占めた構成は、静かなダイアローグを重ねる趣。ステージではエンタテインメントの要素も必要だが、スタジオ・レコーディングではあくまでもシリアスに音楽を構築する、というポリシーが伝わってくる。ラヴァがインプロヴァイザーとしての本領を発揮するスリリングな場面では、第一人者の力量を実感させられるし、そんなボスを慕うボラーニのプレイには心温まる思いだ。両者の間にはイタリアンならではの歌心という共通項がある。そのアドヴァンテージが本作では好作用した。カヴァー曲では今やジャズ界のニュー・スタンダードと呼んでいい《エスターテ》やジョビンのナンバーを、彼らの流儀で演奏しており、説得力を感じさせる。レコーディング・スタジオの残響も計算した音響設計が、ラヴァ&ボラーニの魅力をさらに際立たせたことも追記しておきたい。

【収録曲一覧】
1.Estate
2.The Third Man
3.Sun Bay
4.Retrato Em Branco Y Preto
5.Birth Of A Butterfly
6.Cumpari
7.Sweet Light
8.Santa Teresa
9.Felipe
10.In Search Of Titina
11.Retrato Em Branco Y Preto,var.
12.Birth Of A Butterfly,var.

2006年11月録音

エンリコ・ラヴァ:Enrico Rava(tp) (allmusic.comへリンクします)
ステファノ・ボラーニ:Stefano Bollani(p) (allmusic.comへリンクします)

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