年末に本屋をぶらぶらしていて、タイトルを見て迷わず買った新書がある。『百姓一揆』(岩波書店)。つべこべ言わない、説明もしない、ただ一言の「百姓一揆」。ああ、この言葉になぜ、こんなにも、21世紀の日本人女が胸突かれてしまうのかしら。
著者の若尾政希氏は近世の一揆は決して「非日常」ではなかったと記す。「困ったときに領主は救ってくれるはずだと考え、そのために訴訟するのはあたりまえの日常だった」からだ。もしうまくいかなければ強訴となり、最後は一揆となる。人は生きるために訴えるのだ。
現代の百姓一揆が必要なときがやってきたのだと思う。非日常的な暴動や事件としてではなく、生の意味を求める私たちの知の結晶として。声をあげよう。
※週刊朝日 2020年3月13日号