新型コロナウイルスを巡って、横浜港に停泊している大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で集団感染が起きている。2月20日、乗客のうち2人が亡くなったことや、対応にあたった厚生労働省職員らの新たな感染がわかった。政府の受け入れ対応が失敗し、感染が拡大したのではないかとの批判が高まっている。
厚労省によると、亡くなった80代の男性は2月10日に発熱があり、11日に医療機関に搬送。80代の女性は発熱があり、2月12日に医療機関に搬送していたという。乗客の死亡が確認されたのは初めてで、国内での死亡者は計3人となった。
クルーズ船には約3700人が乗船していた。2月19日までに延べ3011人が検査を受け、そのうち621人の感染が確認されている。
加藤勝信厚生労働相は2月20日の衆院予算委員会で、亡くなった2人について、「症状が出た段階で医療機関に搬送し最善の医療を尽くしていただいた」と述べた。
受け入れなどに従事した職員にも感染者が増えている。厚労省によると、船内で事務業務に従事していた厚労省職員の40代男性と、内閣官房職員の30代男性2人の感染が確認され、入院した。これまでにも、船内で検疫作業をしていた厚労省の職員2人の感染が確認されている。
多数の乗客に加え、職員らにも感染が広がったことは、船内の感染対策が不十分だったのではないかとの見方がある。感染を抑えるために隔離したのに、かえって被害を拡大したのではないかとの批判も出ている。ダイヤモンド・プリンセス号は英国船籍で、米国やカナダなどの乗客も多く、日本政府の対応が国際的に注目されていた。
厚労省は2月20日の会見で、「全体としては感染拡大の措置は有効に機能している。職員の感染防御も適切だった」と強気の姿勢を崩していない。
ダイヤモンド・プリンセス号の感染対策については、専門家も疑問を示している。感染症の専門家で医師の岩田健太郎・神戸大教授は、船内に入ってわかったという問題点について、ネットに動画を18日夜に投稿。船内はウイルスがいない安全なゾーンと、いるかもしれない危ないゾーンの区分けが不十分だったと指摘した。動画は100万回以上再生され、英BBCなど海外メディアでも取り上げられた。