ジャーナリストの田原総一朗氏は、新型肺炎問題の陰に隠れて、「桜を見る会」疑惑の追及がなおざりにされることを危惧する。
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去年の秋、共産党が糾明を始めてから、国会で大きな問題になっている安倍首相主催の「桜を見る会」疑惑だが、野党に対しても少なからず批判が出ている。
新型コロナウイルスで中国では2月5日現在2万4千人以上の感染者、500人近い死者が発表されていて、世界中が恐怖を抱いているときに、いつまでも国会で野党が「桜を見る会」にこだわっているのは問題だ、あるいは安倍内閣の経済政策について問題ありとする論文や書籍がたくさん出ているのに、野党が取り上げないのは安易すぎる、といった批判である。自民党内からも、重大な問題がなおざりにされている、というもっともらしい意見も出ている。
もちろん、新型コロナウイルスや安倍内閣の経済政策も重要な問題だが、私は、それらの問題にマスメディアの関心が移って、「桜を見る会」疑惑が置き去りになってしまうことを強く危惧している。森友・加計疑惑が北朝鮮のミサイル発射問題などで置き去りになってしまったように、である。繰り返しになるが、「桜を見る会」疑惑は、あってはならない、とんでもない出来事なのである。
政府が公表している開催要領によると、招待範囲は割合に具体的で、その人数も約1万人と定められていたが、第2次安倍内閣になってから参加者数が増え続けた。しかも大半が招待範囲とは程遠い、安倍首相や自民党幹部たちの後援会の関係者である。支出も予算の3倍以上に跳ね上がっている。かかった金は税金。どう考えても税金の私物化である。
特に野党が問題にしているのは、共産党の宮本徹衆院議員が招待者名簿の資料要求をした約1時間後に、シュレッダーで招待者名簿を廃棄したことだ。野党が追及すると官邸は、法律に違反した行為をしたとして内閣府の官僚5人を「処分」した。だが、こんなことを内閣府の官僚たちが勝手にやるはずがない。