「2人のパート社員を雇用するから、その人たちの教育係をしてほしいと言われていました」(大石さん)
ところがいつまで経っても、そのパート社員がやってこない。もう半年の契約が切れるという月になって、結局、大石さんは契約継続となった。その後もパート社員2人が雇われることはなく、大石さん一人がその仕事を担当している。
大石さんも幅広い業務をこなせることで、職場で「便利な人ですね」と感嘆されているというから、「教育が必要なパート社員より、教えなくてもなんでもできる派遣社員」という、会社側の判断があったのかもしれない。
派遣社員の、柔軟な働き方が多様なライフスタイルに合わせやすいこと、ほどほどの責任感で気楽に働けること、思わぬ会社との出会いがあることなどが、シニアに評価されていることが伝わっただろうか。
経験を生かして充実した日々を送れれば、シニアの健康寿命は延びるだろう。企業の側も、その経験やスキルを、高く買っていることがわかった。シニア派遣社員と企業は、ウィンウィンの関係なのだ。
定年延長で任される仕事に、今ひとつやりがいを感じない、65歳で今の仕事は引退しないといけない。そんなとき派遣という働き方は、一つの有力な選択肢になるはずだ。(ライター・五嶋正風)
※週刊朝日 2020年1月24日号より抜粋