考古学者・吉村作治さん (撮影/松岡かすみ)
考古学者・吉村作治さん (撮影/松岡かすみ)
エッセイスト・玉村豊男さん (c)朝日新聞社
エッセイスト・玉村豊男さん (c)朝日新聞社

 万人にいずれ必ずやってくる「死」だが、向き合い方は人それぞれ。それこそ、究極に個性が出るものなのかもしれない。「どうせ死ぬなら、自分らしく、悔いなく逝こうぜ!」。その精神で明るく朗らかに死と向き合う、2人の70代に迫った。

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「エジプトで死ねば話は早いんだけど、日本で死ねば、遺体をエジプトまで運ばないといけないんだよ」

 こう言って笑うのは、考古学者で東日本国際大学学長・早稲田大学名誉教授の吉村作治さん(76)。日本におけるエジプト考古学の第一人者として知られ、22歳からエジプトでの発掘調査に人生を捧げてきた。吉村さんは20年前に、エジプトの首都カイロに墓を購入。すでに自身が入る予定の棺桶(かんおけ)も買って、墓とともに“そのとき”を待っている状態だ。

「空の棺桶を持っていると死を招くなんていうけど、全然そんなことない。75歳を過ぎて多少けがが増えたけど、まだまだ元気でピンピンしていますよ」

 エジプトへの思い入れの強さだけで墓を購入したわけではない。きっかけは、20年前の親の死で、火葬を目の当たりにしたことだった。

「エジプトで火といえば地獄を指します。遺体とはいえ、人を火で焼いて骨にするなんて、あまりに衝撃で。たとえ死んでいても火あぶりなんて熱そうだし、自分は絶対に嫌。それで日本じゃなく、エジプトを選んだんです」

 エジプトの墓は、地上に屋根付きの小さな家を建て、地下にコンクリート造りの部屋があるのが一般的なつくり。遺体を入れた棺桶は地下の部屋に置かれる。吉村さんが購入した墓は、広い墓地の中にある1区画分で、大きさは1坪程度。今と比べて物価が安かったこともあり、「土地代を含めて10万円もかからなかった」という。

「エジプト人の妻とはだいぶ前に別れたし、子供2人はもう独立してる。だから、この墓に入るのは僕だけ。もしこの先、独身の娘が結婚しないままだったら、入れてあげてもいいけどね」

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松岡かすみ

松岡かすみ

1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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