4.(三)  初天神 縁日でおねだりするクソ憎らしい子供と抜けたオヤジのバトル。NHKで賞ももらった、地方でも地力を発揮する頼れる大ベテラン。

5.(一) 粗忽の釘 そそっかしいを超越した、シベリアンハスキーと同じ眼をしたヤバいヤツが隣に越してくるという「怪奇譚」。伸縮自在の長距離バッター。

6.(捕) 短命 八っつぁん、隠居さんにものを聞く。隠居それに答える。ただそれだけの噺。おじさん同士のジャレ合い。呑みながら話せるあぶさん的選手。

7.(遊) 真田小僧 小遣いを親からゆすりとるクソ憎らしい子供噺、第2弾。浅草の寄席でよくやる。手堅い守りでバントも上手い。いぶし銀のつなぎ役。

8.(左) 噺家の夢 ハイテンションかつコンパクトで5分でできる。田舎者がデカい声でワーワーうるさい、元気がとりえの新人王。でも夢オチ。

9.(投) あくび指南 これまた渋い噺のはずが「肩にメスを入れたら」やたらにスピードが出るようになったが、時々ビックリするほど滑るコントロールに難ありな剛腕エース。

 来年はレギュラーをおびやかす新人の台頭があるのか? 選手の皆さん、オフに気を抜いたら「喝ですよっ!!」(張さん)。

週刊朝日  2019年12月27日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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