大谷:いえ、合っていなかったです(笑)。日本みたいにきっちりしてないんです、いろんなところで。僕はけっこうきっちりしてほしい人間なんですけど、いろんなところが適当だったので、イライラの毎日でしたね。
林:ニューヨークに行っちゃおうとか、そういうことは思わなかったんですか。
大谷:仕事がないわけでもないですし……。でも、いま思いますね。どこか行っておけばよかったなって。今ちょっと英語を勉強しようかなと思ってるんですけどね。
林:ところでつまらない話ですけど、韓国の現場と日本の現場、お弁当はどっちがいいですか(笑)。
大谷:韓国かなあ(笑)。まず、お弁当文化じゃないので。
林:韓国は冷たいごはんを食べさせられると屈辱なんですってね。
大谷:はい。ごはんを食べることに対する執着心が、日本より強いです。あいさつの一つとして「ごはん食べた?」というのがあるんです。
林:「まだ食べてない」と言ったら、おごってあげる文化なんですか。
大谷:食べたか食べてないかを聞きたいんじゃなくて、「ごはん食べた?」というのがあいさつなんです。あったかいものをちゃんと食べることにすごくこだわりますね。
林:お弁当じゃなくて、ケータリングなんですね。あったかいものがいっぱい並んで、おいしそう。
大谷:冬の撮影はとにかく寒いんです。気温がマイナスの中でのハードスケジュールなので、あったかいものがないとやっていけないというか。
林 二つの国の文化の違いを知ってる人、大谷さんぐらいですよね。
大谷:どっちもよさがあって、ソウルにいるときは日本がすごくよく見えるんですけど、戻ってくると向こうのよかった点も見えてきますね。
林:日本に帰ってきて、すぐ日本語のセリフが頭に入ってきました? 今までハングルだったのに。
大谷:帰ってしばらくは、日本語でのセリフをどう言っていいかわからなかったです。日常の会話はぜんぜん大丈夫なんですけど、セリフっぽく言うのはどうなのかな、と思いながらやってました。今も場数を踏んでいる段階で、少しずつ合わせていっているという感じです。
(構成/本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2019年11月29日号より抜粋