2019年7月、那須御用邸を散策する上皇ご夫妻  (c)朝日新聞社
2019年7月、那須御用邸を散策する上皇ご夫妻  (c)朝日新聞社
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1960年、イランのイスラム寺院で、市民の歓迎に手をふる美智子さま。その姿をムービーで撮影する当時の皇太子明仁さま(美智子さまの左)  (c)朝日新聞社
1960年、イランのイスラム寺院で、市民の歓迎に手をふる美智子さま。その姿をムービーで撮影する当時の皇太子明仁さま(美智子さまの左)  (c)朝日新聞社
1962年、宮崎県青島で、拾った貝を手に語り合うおふたり  (c)朝日新聞社
1962年、宮崎県青島で、拾った貝を手に語り合うおふたり  (c)朝日新聞社

 10月20日は美智子さまの85歳の誕生日。軽井沢での「テニスコートの恋」から、民間で初めてお妃(きさき)に選ばれ、世紀の結婚と騒がれたあのときから60年が経つ。一般にはなかなか見えづらい夫婦の形だが、上皇さまも美智子さまを支え続け、愛を育んできた。

【写真】市民の歓迎に手をふる美智子さまの姿をムービーで撮影する当時の皇太子さま

*  *  *

「あなたと結婚できて、自分は本当に幸せだった」

 上皇さまは夜、美智子さまに穏やかに語りかけ、こう続けるという。

「あなたもそう思ってくれているといいのだけど」

 妻への愛情と敬慕に満ちた言葉。それは、毎晩のように続くらしい。

 美智子さまは、電話の向こうにいる親しい友人に、やや真剣ともとれる様子で問いかけた。

「おかしいかしら」

 電話の相手は、美智子さまと20年以上の親交がある、絵本編集者の末盛千枝子さん。末盛さんは、思わずにっこりして答えた。

「私たちの間でしたら、それは、『ごちそうさま』という感じですよ」

「そう?」

 上皇さまの言葉は、うれしくも、繰り返しおっしゃるので不思議に感じた、という美智子さまに、末盛さんはこう添えた。

「(上皇さまは)本当にそう思ってらっしゃるのでしょう」

 美智子さまは今年、夏の軽井沢での静養のあと、9月に乳がんの摘出手術を受けた。末盛さんが電話を受けたのは、美智子さまが軽井沢に出発する直前だった。

「明日の朝、軽井沢に行ってしまうので」

 そう語った美智子さま。 がんの診断に気持ちが少し沈んでいるように、末盛さんには感じられた。

 がんがごく初期のステージだったことや、年齢を考えると、手術をしないという選択肢もあったのでは。

 記者のそうした問いに、末盛さんはこう話した。

「きちんと手術をして、上皇さまに安心していただきたいと思われたのではないでしょうか。ただ、入院することで、仙洞御所に上皇さまをおひとりにしてしまうことを、いちばん心配なさっておられるようでした」

 上皇さまは、9月8日の手術当日、手術室に向かうため、エレベーターに乗り込む美智子さまを最後まで見送った。無事手術を終えた美智子さまは、術後わずか2日で退院した。

 過去にこんな場面があったのを思い出す。

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