井上慎一(いのうえ・しんいち)/Peach Aviation代表取締役CEO。1982年、早稲田大学法学部卒業。三菱重工業、全日本空輸の北京支店総務ディレクター、アジア戦略室室長などを経て2011年から現職。バニラ・エア代表取締役社長を兼務。 (撮影/仲宇佐ゆり)
井上慎一(いのうえ・しんいち)/Peach Aviation代表取締役CEO。1982年、早稲田大学法学部卒業。三菱重工業、全日本空輸の北京支店総務ディレクター、アジア戦略室室長などを経て2011年から現職。バニラ・エア代表取締役社長を兼務。 (撮影/仲宇佐ゆり)
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 航空業界でLCC(ローコストキャリア)と呼ばれるPeach(ピーチ)は、2012年の就航から3年で単年度黒字化を達成した。その仕事術を社長自ら明かすのが『「おもろい」働き方で社員も会社も急上昇する Peachのやりくり』(東洋経済新報社、著・井上慎一、1500円※税別)だ。

 国内外36路線のピーチの運賃は、従来の大手航空会社より格段に安い。前の座席との間隔を少し狭くしたり、チェックイン時間を短くしたりして低コスト化を図っている。座席指定や機内の飲食は有料だ。

「コンセプトは『空飛ぶ電車』。安全運航は愚直なまでに大真面目にやり、その上で自社の特質を出していく」

 と井上慎一CEO。大阪の会社らしく機内でたこ焼きを販売し、客室乗務員は「おおきに」と挨拶する。段ボールを使った自動チェックイン機、体重計を利用した手荷物計測器も編み出した。

「コストカットと言うと思考停止するけど、やりくりと言うと、知恵を働かせようとするでしょう?」

「おもろい」をベースにした企画の発想法、自分のために働くことの大切さなど、36項目を語っている。

 井上さんは全日本空輸の北京支店に勤務していた2008年、突然、東京の社長から呼び出され、LCCの立ち上げを任された。

「うそでしょ、と思いました。青天の霹靂(へきれき)という言葉を初めて実感しました。3年以内に飛ばせ、インバウンドを狙えと」

 悩みつつ調査を始め、既に成功していた欧州のLCC、ライアンエアの元会長に話を聞くと、欧州の年間平均運賃は従来の会社の約7分の1だという。それを実現したら日本は変わる。体が震えスイッチが入った。「アジアのかけ橋」を企業理念に、関西国際空港を拠点に事業をスタート。

「なぜ関空なのかとか、日本のLCCなんて成功しないとか、ずいぶん言われました。でも、他人の言うことは参考意見。自分がいけると思ったら、とことんやったほうがいい」

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