──作品が連載されていたころと今の医療の世界はどう違いますか
改めて手塚作品を読み返して、連載されていた70年代と今の医療や病院の違いを感じました。
当時は医師の権威が強かったなと思いました。「白い巨塔」みたいに大名行列のような院長回診とかがあり、医師会がとても力を持っていた。そういうことが描かれています。そして社会的には公害の問題が大きかったので、その公害が病気の原因になったとかいう話が多かったですね。
──手塚作品ということで特に工夫したことなどありますか
書いていて、医師免許を持ってた手塚先生だけに各話のエピソードの核心と病気がぴったり合っていることが改めてわかりました。
自分の作品でも手塚先生の言い回しを生かし、ギャグとシリアスの配分とかでも手塚作品らしい感じを出したいと思いました。
セリフにしても、BJならこの場合、「おまえさん、やるじゃないか!」と言うだろうなと、ファンの人も同感してくれるようにいろいろ考えました。
そして手塚ファンに楽しんでもらうため、各話にBJシリーズ以外のおなじみのいろいろな手塚作品の印象的なキャラクターをゲストとして登場させました。
──医療者にもBJのファンが多いって本当ですか
BJを読んで医師とか医療関係者を目指したという人が多いんですよ。マンガに出てきた症例を解説する本を出した人もいます。そういうファンの中のひとりの医師に監修をしていただきました。ほかにも多くの医師に病気や手術などについて、「今ならBJはこういう問題にこう立ち向かうのではないか」などと相談して書きました。皆さん喜んで協力してくれたのがうれしいですね。その中にはあのiPS細胞の山中伸弥教授のところで働いている人もいます。
──作品中のiPS細胞、AI医療ロボットなどの最先端医療のこれからが気になります
小説では例えばBJの留守中にケガをした犬をピノコが手術することになりますが、リアルタイムで海外にいるBJがスマホで症状を見ながら指示をするんです。今の時代ならではのストーリーだと思います。
iPS細胞は連載時にはありませんでしたが、山中先生がノーベル賞を取られて以後、実際に新薬の開発に役立てたり、人体機能を取り戻すための再生医療での治療ができるようになったりしてきました。小説の中でもBJが昔の患者さんと再会して、あのころはできなかった治療ができるようになったと告げます。