瀬名秀明(せな・ひであき)/1968年生まれ。仙台市在住。薬学博士。95年に『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞受賞。著書に『科学の栞 世界とつながる本棚』『この青い空で君をつつもう』『魔法を召し上がれ』など (撮影/倉田貴志)
瀬名秀明(せな・ひであき)/1968年生まれ。仙台市在住。薬学博士。95年に『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞受賞。著書に『科学の栞 世界とつながる本棚』『この青い空で君をつつもう』『魔法を召し上がれ』など (撮影/倉田貴志)
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「週刊少年チャンピオン」が創刊50周年を記念して人気作品をノベライズした中の一冊
「週刊少年チャンピオン」が創刊50周年を記念して人気作品をノベライズした中の一冊
『ブラック・ジャック』 1973~83年に「週刊少年チャンピオン」で連載された手塚治虫作品。医師免許を持たない「ブラック・ジャック」と呼ばれる天才外科医が高額な報酬と引き換えに難病に立ち向かう。 (c)Tezuka Productions
『ブラック・ジャック』 1973~83年に「週刊少年チャンピオン」で連載された手塚治虫作品。医師免許を持たない「ブラック・ジャック」と呼ばれる天才外科医が高額な報酬と引き換えに難病に立ち向かう。 (c)Tezuka Productions

 手塚治虫が描いた孤高の天才外科医が現代によみがえったら──。7月に出版された『小説ブラック・ジャック』(誠文堂新光社)は「AI」「iPS細胞」「終末医療」など現代的なテーマのもと、手塚マンガの人気キャラクターが復活したと話題を呼んでいる。進化する最先端医療はどこまで患者を救うのか。著者の瀬名秀明さんに聞いた。

【瀬名秀明さんの『小説ブラック・ジャック』はこちら】

*  *  *

──瀬名さんは『ブラック・ジャック』だけでなく手塚治虫の作品をずいぶん読んでいるそうですね

 子供のころからたくさん読んでいました。どの作品も、ストーリーの面白さに加えて、毎回作者のアイデアが光っていましたね。

 今回小説化を引き受けた『ブラック・ジャック』も大好きで、単行本も子供のころ全巻そろえていましたよ。1話20ページあまりという少ないスペースで完結しなければいけなかったのに、あれだけの世界を描けるのはすごいと思いますよ。

 実際は大人の世界の話だけど、子供にもわかるように手塚さんは描いてたんだと思います。とはいっても当時の子供読者には手術代が1千万円とか1億円とか言われてもその高額さはよくわからなかったです(笑)。

 それでも、将来のことをよく考えて生きろとか、一生かけて治さなければいけない病気は人生を変えるものだなどの教訓が含まれているのは感じましたね。

 ブラック・ジャック(BJ)は法外な治療費を要求しますが、大金持ちの客でも命を大切にしない人のことは嫌いなんです。病を抱えていても、貧しくても生きることに価値を見いだしているような人からは大金を取らないんですよ。時代は変わっても、手塚先生が描いた「生きる」という本質は変わりません。それは何なのかということを私の作品にも込めたつもりです。

──小説ということで戸惑いはなかったですか

『パラサイト・イヴ』から24年ぶりに手術のシーンを書いたわけです。ずっと医学ものを書いてなかったんですよ。今回お話をいただいたとき、書籍でというのは想定外なので驚きましたが、BJを現代によみがえらせて自分の創作で描けるのはうれしかったです。

『小説ブラック・ジャック』を執筆するために、復刊された241話を購入してすべて読みました。原作は1話ずつが短いので小説もそれがいいと思い、短編5話構成にしました。

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