徴用工問題や輸出規制で日韓関係がきしむ中、7月22日、韓国のLCC(格安航空会社)のティーウェイ(TW)航空は、大邱(テグ)など韓国の地方都市と九州の3県を結ぶ定期便の運休を発表した。利用者の伸び悩みや予約のキャンセル増が原因。運休は8~10月に実施。大分─釜山(プサン)、熊本─大邱、佐賀─釜山の3路線だが、いずれも韓国から九州への観光客増加で昨冬に就航したばかり。TW航空大阪事務所の担当女性は「立ち上げ当時はよかったのですが、すぐに悪くなりました。韓国から日本へ行く人が減って採算が取れない。11月以降も再開は難しい」と話す。熊本県は「TW航空は、関係悪化でキャンセルや買い控えが増えたためと言ってきた。新年度から搭乗率が大きく落ちた。9割5分ほどは韓国からの客なのでインバウンド(訪日外国人)が減ってしまう」(企画振興部交通政策課)と懸念する。
運賃は1千円から3千円程度と破格。韓日文化交流センター熊本の崔相哲(チェサンチョル)事務局長は「熊本と大邱の路線は徴用工の問題などが出る前から『採算割れで9月に廃止する』と聞いていた。あれだけ安くても利用しないとは」と残念がる。「日本の人は格安便があっても旧来の高い飛行機に乗るけど韓国人は安い便に乗るので貴重でした。今後、彼らは中国や東南アジアに行ってしまい航路回復は簡単ではない。以前、韓国の人はソウルか釜山に出なくては外国に行けなかったけど、最近はこうした便で外国に行けた。政治家たちが邪魔しないでほしい」と訴える。
一方、佐賀県によると、昨年12月に就航した同航空の佐賀─釜山便はことし3月末までの搭乗率は約67%。しかし4月から6月末までの搭乗率が約58%と落ちた。山口祥義知事は「大変残念だが、現在の日韓関係を考えると致し方ない」とコメントした。TW航空は佐賀─ソウル便の見直しも示唆している。
イースター航空も7月9日、9月から釜山─札幌、釜山─大阪の便を運休すると発表した。ほかにも路線を見直す動きがあるという。釜山市の呉巨敦市長は7月23日、自身のフェイスブックに「釜山市は日本との交流事業を全面的に見直す」「安倍政権は不当な経済制裁措置を撤回するどころか、文在寅(ムンジェイン)政権に無礼な対応を続けている」などと投稿した。「きしみ」の影響は日本の地方空港にとどまらないかもしれない。(粟野仁雄)
※週刊朝日 2019年8月9日号