

令和初の国政選挙となった参院選挙(投開票7月21日)。改憲勢力3分の2割れでも4選を目指すとされる安倍首相は、祖父の岸信介氏がかつて夢見た三度、首相に登板する野望を実現できるのだろうか? 本誌でおなじみの御厨貴・東大名誉教授(政治学)と松原隆一郎・放送大学教授(社会経済学)が筋書きを語り合った。
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松原:参院選後、永田町はどうなるでしょう。
御厨:安倍政権がどこで終わりを迎えるかというのが次のポイントですな。私は安倍さんがまっとうな理由で辞めるとは到底、思えない。えっ? こんなことで、と思うことで最後は辞めるんじゃないかと思う。
松原:具体的には。
御厨:体調不良か、精神的に崩れるかもしれない……。
松原:自民党内では安倍4選論が浮上しますね。
御厨:次の総裁選びは難しい。次の総裁が誰になるかで党分裂だって起こる。
松原:分裂ですか?
御厨:そういう点で、自民党にとって、「総裁任期は連続3期9年まで」というルールを変えてでも、安倍さんが続投するというのは意味があるわけですよ。
松原:なるほど。
御厨:安倍さんが首相の座を降りるのには、いくつかの筋書きがあります。安倍さんがわざといったん降りて、別の人にバトンタッチする。だが、それが結局、大失敗し、もう一度、党内から「やっぱり安倍さんじゃなきゃダメだ」という待望論が巻き起こって、復活するというシナリオは本人も思い描いていると思います。
松原:安倍さんの次に総裁になる人は誰でしょうかね。マスコミの世論調査では必ず、小泉進次郎氏、石破茂元幹事長の名前がトップに挙がります。
御厨:そもそも、党内には人材がいないんだ。安倍さん自身が後継者をつくる気がないんだから。
松原:そういう意味では、プーチン方式というか、一回首相の座を降りて、また返り咲くシナリオはあながちないとは言えない。
御厨:安倍さんの母方の祖父の岸信介元首相の回想を読めば、おのずと方向性が見えてくる。岸さんは再登板できなかったが、2、3度と首相はカムバックして長くやったほうがいいと思っていた。そのほうが良い政治ができるとね、4度やった伊藤博文を挙げている。