だが、国民の意識が変わった、と安倍首相は捉えたのだろう。
戦争を知っている世代はほとんどいなくなった。もちろん、安倍首相自身、戦争を知らない世代である。
戦争を知っている世代は、敗戦の反省が原点になっているのだが、いまや、百田尚樹氏の『日本国紀』など、日本がいかに優れた国であるかということを強調する本が超ベストセラーとなり、門田隆将氏の『新聞という病』が非常に売れているようだ。『新聞という病』は率直に言えば、朝日新聞たたきである。朝日新聞は、安倍内閣の集団的自衛権の行使の容認をはじめ、自衛隊の強化には批判的なのだが、いまや、マスメディアでも朝日たたきがむしろ優勢である。
そして、トランプ大統領は「日米安保条約は不公平だ」と強調した。
米国は日本が攻撃されたら日本を守るが、米国が攻撃されても日本は何もしない。テレビを見ているだけだ、というのである。
これに対して、日本側の反応はなぜか大変弱い。日本は米国に多くの基地を提供しているのだから不公平ではないというのだ。
だが、安倍首相自身が、かつては米国は不平等だと文句を言っていたが、集団的自衛権の行使を認めたら何も言わなくなった、と語っている。なぜそのことを表明しないのか。
私は、憲法改正は無理だと捉えている。自民党のほとんどの議員にその覚悟がないからである。詳しくは改めて記す。
※週刊朝日 2019年8月2日号