加えて、日本のテレビ報道界は、歴史を知らなすぎる。ここまでは、韓国の国内事情を中心に話を進めてきたが、そもそも、日本のテレビ報道界が文在寅批判をスタートしたのは、昨年2018年10月30日に、日本の植民地統治時代に日本企業が朝鮮人に強制労働をさせたことに対して、韓国大法院(最高裁判所)が賠償を命じる判決を出してからだ。その時、テレビ報道界は一斉に「賠償する必要はない」というトーンで、韓国を非難した。

 いいかね、1939~1945年の強制連行労働者は、『朝鮮人強制連行の記録』(朴慶植著、未來社)では72万人以上、『太平洋戦争下の労働者状態』(法政大学大原社会問題研究所編、東洋経済新報社)では82万人以上としているが、日本政府の計画では初期にこの朝鮮人労働者を「供出」させたとある。辞書を引いてご覧なさい。供出っていうのは、物資に使う言葉だよ。朝鮮人は、日本人によってモノ扱いされたんだ。日本のテレビ・新聞は徴用工(ちょうようこう)と呼んでいるが、徴用なんて生やさしい話ではない。

 それをやったのが、私の祖父たちの世代なのだから、賠償を拒否する日本人を私が一喝したくなる気持は分かるだろう。1910年に日本の韓国統監・寺内正毅(てらうち・まさたけ)が韓国と日韓併合条約を締結して朝鮮を植民地化し、自ら初代・朝鮮総督に就任した当日、朝鮮の首都・京城(けいじょう)=現ソウル=で写真館を経営していた私の祖父が寺内に呼ばれて、韓国併合の祝賀会を撮影した。その後、祖父は京城商工会議所議員にトップ当選しているのだ。

 幸いにも、1945年8月15日に日本が白旗を掲げて無条件降伏したので、わが祖父は無一文になって日本に帰国したが、日韓併合も強制連行も知らなかったわれわれの世代が、「私は赤ちゃんで何も知らなかったので、日本は賠償する責任はありません」なんて言ってはいけない。

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