感染力が強い感染症の代表として、「はしか」や「みずぼうそう」がよく挙げられます。実は、百日咳の菌も同じくらい強い感染力を持っています。百日咳菌の主な感染経路は、咳などをして菌が拡散する飛沫(ひまつ)感染です。そのため、閉鎖空間で一緒にすごす家庭や学校では、感染源が入り込むとひろがりやすいのです。
大人の百日咳の症状は“ふつうの咳”だけなので、風邪やぜんそくなどと間違われやすく、診断が非常に困難です。そもそも、風邪だとしても咳だけであれば会社や学校を休んだりすることはあまりありません。感染力が最も強くなるのは咳が出始めてからの2週間ほど。感染力の強い期間に、百日咳を疑わずに風邪だと思い込み会社や学校に行ってしまい、菌をばらまいてしまいます。WHO(世界保健機関)は百日咳の特徴として「2週間ほど続く咳」と提唱していますが、その間に早期に診断され治療開始されるのが難しいのです。
早期診断や治療が難しい病気は、予防をすることが大切になってきます。
百日咳のワクチンはありますが、最近、感染の予防効果は短いと考えられています。日本では生後3カ月からワクチンの定期接種が4回あり、1歳半前後で接種が終わります。もっとも具合が悪くなる赤ちゃんに対して、ワクチンによる重症化や死亡の予防効果は明らかにあります。ただ重症化はしない年長児や成人の感染を予防するための長い予防効果がなく、小学校に上がる前には多くのお子さんはワクチンで打った抗体がほとんどなくなってしまいます。
感染症が流行する条件のひとつに感染しやすい感受性者が一定数いることがあげられます。ワクチンの定期接種が1歳半前後で終わる日本では、ほとんどの人が抗体を持たないことになります。
感染力が強く誰でも感染する可能性のある百日咳。咳の症状が出始めたとき、長引く咳をしている人が周りにいたら百日咳を疑い、早めに医療機関を受診してください。自分でも知らないうちに感染源になっているかもしれません。(文・濱田ももこ)