この逮捕に対して、複数の国際人権団体やジャーナリズム団体から、政権への批判を沈黙させることを目的とした報道の自由の弾圧だとして、強い批判が巻き起こった。ラップラーへの抑圧は以前から度々繰り返されていたためだ。
逮捕翌日、10万ペソ(約21万円)を支払い保釈されたレッサ氏は、「(逮捕は)権力の乱用であり法律を武器として利用している」と政権を批判。圧力に屈しない姿勢を強調したが、抑圧的で国民から絶大な支持を受けるドゥテルテ体制下で、どこまで強気の姿勢を貫けるかは不透明だ。
自らに批判的なメディアをフェイクニュースと攻撃し、支援者向けの過激な言葉を繰り返す。世界中で「ミニ・トランプ」が跋扈(ばっこ)している背景には、マスメディアが凋落(ちょうらく)し、ネットを通じて直接支持者にメッセージを送れる環境が整ったことがある。権力と対峙(たいじ)するメディアを市民が必要としない限り、独善的権力者の天下はまだまだ続くだろう。
※週刊朝日 2019年3月8日号